「GOLD DUST」
 
 
 自分で詞を書いて曲をつけ、歌う。そんなことをしているというと、人は何か特別なことをしているみたいに、すごいと言う。すごいと言って、それで終わる。
「別にすごくはないんだ」と僕は言う。だって、すごいかどうかはその中身によるのであって、していることはとても単純なこと。子供が替え歌を作って歌うのと大して変わらないことではないか。
 大学で同級だった後藤勇がやはり音楽というものをやっているのを、僕もただすごいとだけ思って眺めていたことがあった。キャンパスで行われるライブを見たり、自作のテープをもらって聴いたりして、すごいなぁ、うまいなぁと思った。それ以上それ以下、いずれでもなかった。
 それが、就職後、変わった。縁あって、もう一度彼の音楽に触れる機会があったのだが、久しぶりに彼の音楽を聴いて、僕は激しく動揺した。それは大学入学より前に作った曲を集めたテープだったのだが、空き缶を叩いて作ったリズムや風呂場で歌うエコーやテープを逆回転させて録音した曲などが入っていて、まるで飾りつけのない「裸の音楽」をみたような気がした。そのとき初めて、音楽を作ることがどれほど刺激的で創造的なものであるか思い知ったのだった。
 僕は後藤の薦めでMTRという4トラックのカセット・レコーダーを買い、ギターも買った。音楽とは無縁の僕だったが、衝動に駆られるまま次々に唄を作って録音した。4つの音、たとえばギター、ベース、リズム、唄が重なるとすごいことになった。冒頭に書いたことと矛盾するようだが、音楽の中身ではなく、4つ重なる音がすごいと思った。「音楽は聴くものではなく、自分でやるもんだ」とこのとき思う。子供の替え歌のように単純なことだけど、普通の大人がもっと音楽をした方がいい!
 後藤は、あれからもずっと音楽を作り歌いつづけている。どんどん変化しつつも、根本的な音楽作りの衝動は失うことなく内包していて、これは本当にすごいことだと思う。このすごさをCDにまとめてみたいと思い、今回「GOLD DUST」というベスト盤を作った。後藤の了解を得て、選曲・構成をさせてもらい、ついでにライナーノーツも書かせてもらった。ぜひ、いろいろな人にこのCDを聴いてもらい、後藤音楽の魅力を知ってもらいたいと願っている。そうすることで、僕に「音楽」を教えてくれた後藤に少しはお返しができるかなと思う…。
 
 
■CD(無料)の申し込み…> 後藤勇WebSite「耳の穴」