

9月からスタートしたツアーの最終日で、カメラも入っていたようだ。ツアーは全国21公演だったが、大好評につき延長が決まり、2016年2月〜4月まで18公演追加することになったようだ。追加公演が1、2回増えることはあるが、ツアーそのものが延長ってのはあまり聞いたことがないし、そもそも67歳にして、この精力的な活動は、一体なんということか!陽水さんに限らず、近頃は、老ミュージシャンの活躍が目立つ。今年の例でいえば、作詞家・松本隆氏(66歳)の四十五周年記念ライブ「風街レジェンド2015」が記憶に新しい。矢沢永吉も66歳にして、東京ドーム・コンサートをやっている。来年の話にはなるが、宇崎竜童は70歳のバースデーライブをやるらしい。音楽ばかりでなく、田中泯(70)、吉永小百合(70)、五木寛之(83)、山田洋次(84)など第一線で活躍している老人のなんと多いことか。というか、そもそも老人には見えない!(笑)
陽水さんのライブは、トークが1〜2割である。軽妙かつ面白い。クスッと笑えるものから、大爆笑ものまで、実に巧みな話術である。今回の話の中では、「超一流イタリア服飾ブランド店」へ行ったときのエピソードが面白かった。あくまで「見学」のつもりで入った店で超プロフェッショナルな女性店員に勧められるがままに高級シャツを2枚買ってしまい、さらにジャケットを買わされそうになり、ずらりと並んだ派手派手なジャケットの一番端にあったやや地味目のジャケットなら着られそうだと選んだのが、自分が着てきたものだというオチ(笑)。若い頃は、こういう場でのトークは全くダメだったそうで、「人間、変わるものですね」と本人も驚きつつ、トークは延々続くのだった。
今回のツアーに先立ち、「UNITED COVER 2」というアルバムが7月に出ている。ちなみに「UNITED COVER 1」は2001年に出ていて、その第2弾である。タイトルにあるとおりカバー集で、今日は、そのうち「厳選に厳選を重ねて」、大橋純子の「シルエット・ロマンス」、吉田拓郎の「リンゴ」、フランク永井の「有楽町で逢いましょう」、北山修(作詞)と加藤和彦(作曲)の「あの素晴らしい愛をもう一度」の4曲が朗々と歌われた。カバー集でありながら新曲も2曲あって、NHK「ブラタモリ」のオープニング・テーマ「女神」とエンディング・テーマ「瞬き」。タモリさんの紹介で知り合ったオルケスタ・デ・ラ・ルスが演奏するラテン系の楽曲になっている。ちなみにツアーバンドは、ギター2、ベース、ドラムス、コーラス2、キーボードに陽水さんの8名編成だった。ギターの一人は、長田進だった(民生バンドの元メンバー)。
僕が陽水さんに興味をもつようになったのは、民生が陽水さんと一緒に活動を始めてからである。「アジアの純真」「渚にまつわるエトセトラ」といったパフィーのヒット曲だけでなく、小泉今日子の「月ひとしずく」やユニットとして発表した名曲も数多い。「最後のニュース」という歌がある。前にもどこかで書いたが、初めて聴いたのは民生のライブ。CDでも何度も民生バージョンを聴いていたので、後から原曲を聴いてもあまりピンとこなかった。力強く熱唱、絶叫する民生の方がいいと思っていた。でも、今になると、陽水さんの方がいい。絶叫しなくても、この詞を書いた気持ちが心に沁みてくる。世の中の無情、冷たさ、厳しさに対して、たった一人でも抵抗しようという覚悟が感じられて、心の中に涙があふれる。「紙にぴゅっぴゅっぴゅって書いたメモを渡されて、それを見ながらメロディをつけたり、その逆をやったりしていくわけですが、案外適当なんだなと思うと同時に、よく考えられているんだなと思うところもあり…」と民生が言っているように、とらえどころのない飄々とした言動とは裏腹に、よく考えしっかり仕事している部分もあって、そのギャップが魅力なのだろうと思う。
陽水さんのライブへ行くと、肩の力が抜けて自然と元気が湧いてくる。こんな風に歳をとれたらいいなと、将来に希望がもてる。
Set List
01 コーヒー・ルンバ
02 ダンスはうまく踊れない
03 飾りじゃないのよ 涙は
04 鍵の数
05 お願いはひとつ
06 シルエット・ロマンス
07 リンゴ
08 有楽町で逢いましょう
09 女神
10 瞬き
11 あの素晴らしい愛をもう一度
12 リバーサイド ホテル
13 ジェニーMy love
14 My House
15 青い闇の警告
16 氷の世界
17 とまどうペリカン
encore
18 渚にまつわるエトセトラ
19 夢の中へ
20 傘がない
21 結詞
♪井上陽水「コンサート2015 UNITED COVER 2」
東京国際フォーラム
2015年12月5日(土)17:10-19:30 / 2階13列88番