「芋っ子ヨッチャンの一生」
 
 
著者:景山光洋
 
 
 記録写真の鬼と呼ばれた著者が戦前から撮りつづけた家族の記録写真である。ヨッチャンというのは著者の4人いる子供の末っ子。わずか5年2ヶ月で短い生涯を閉じたヨッチャンの一生を父である景山氏が涙ながらにまとめた「我が家の写真日記 五」がこの本の基になっている。
 終戦の年、景山氏は朝日新聞社を退社し、神奈川県藤沢市鵠沼に転居する。その翌年、三男、賀彦(ヨッチャン)が生まれる。
 貧しく、世の中に食べ物がない時代だ。畑で獲れた芋や野菜を抱えて満面の笑みがある。父が買い出しでようやく手に入れた粟や豆の入った風呂敷包みを前に、子供らが正座しお辞儀している写真もある。言葉では言い尽くせない、夫婦の愛、兄弟の触れ合い、家族の絆がどの写真からも伝わってくる。だからこそ、ヨッチャンが原因不明の病気と戦い、よくなったら家に帰ると言いながら、ついに昇天する姿は見ていて本当につらい。
 この写真集は一部の人から「景山光洋の代表作」と賞賛されていたものの、ついに出版されることはなかった。このアルバムを一見しただけで二度と開くことのなかった妻(ヨッチャンの母)の気持ちを考え、断念したのだった。
 戦後55年が過ぎ、一見平和な世の中にも、まだたくさんの不幸な死がある。世界を見渡せば、戦争の火がいつもどこかで燃えている。「ヨッチャンの死を繰り返さないために」と、景山氏の次男で写真家の智洋氏が出版したのがこの本である。本当に大切なものは何なのか。あらゆる肩書きの前に、まずは人間であれと想う。
 
 
(新潮社フォト・ミュゼ)