U2
VERTIGO//JAPAN TOUR//2006

  さいたまスーパーアリーナ

  2006.12.4(mon) 
 「ZOO TV ツアー」の来日公演が1993年だった。アメリカ公演では、ステージから大統領に携帯電話をかけるというパフォーマンスがあったり、天井から車がつり下げられたりと、とにかくすべてが大袈裟だった。大がかりな舞台装置が東京ドームにも運び込まれて話題になった。その後、97年に「POPマートツアー」があって、以来、来日していない。「今年あたり、久しぶりにU2のライブに行きたいな」って思ってたら、本当に来日の話があって驚いた。あれから、13年である。「ヨシュア・トゥリー」(87)でU2はロック界の頂点に立ったといわれ、その後も「ロックの原点」だとか「ロックの未来」だとかいわれ続けた。ボノの政治的な発言がマスコミをにぎわすこともあったが、マンネリ化することなく、常に新たな挑戦を続けてきた。「ZOOROPA」(93)のあと、「POP」(97)、「ALL THATYOU CAN’T LEARVE BEHIND」(00)があり、最新アルバムの「HOW TO DISMANTLEAN ATOMIC BOMB」(04)へと続く。今回は、そのアルバムのファースト・シングル「Vertigo」を冠したワールド・ツアーだ。当初、4月来日の予定だったが、メンバーの家族が病気という理由で延期になっていた。待ちに待ったU2ライブが、ついに実現した!

 僕の座席は、Aゲート300レベル1列47番。3階席のわりと前の方だったが、やはりステージは遙か彼方だった。でも、U2のメンバーと同じ場所にいられるだけで、うれしさがこみ上げてきた。メンバーはデビュー当時から不変の4名である。ボノ(vo/g)、エッジ(g/key)、アダム(b)、ラリー(ds)を見るのは久しぶりだった。スクリーンに映し出された容姿をみると、ちょっと年とったなという気もしたが、演奏がはじまると相変わらずエネルギッシュだった。デビュー曲の「I WILL FOLLOW」もあったし、「New years day」や「PRIDE」、「With or without you」といったヒット曲も織り交ぜつつ、最新のアルバムからは「Vertigo」をはじめ多くの曲が演奏された。よく古い曲だと原曲を大きくアレンジして演奏されることもあるが、U2の今回のステージでは、どの曲も原曲に忠実に演奏されていて、個人的にはとてもよかった。古い曲はそれだけ長く聞いているので、どこでどういう音が入るのか、どういう風に歌うのかが身体に染みついている。それを今まさに生で聞いて体感するのがライブの醍醐味だ。原曲のまま聞く方が僕は好きである。今回のステージでも映像はかなり凝ったものになっていた。また、前回はベリーダンサーとボノが一緒に踊る「Mysterious ways」だったが、今回は舞子さんがステージを歩くというパフォーマンスだった。「Angel of harlem」などでは、アリーナにせり出した回廊のようなステージに出てきて、まるで観客の中で歌っているようだった。そういった観客との一体感を重視する姿勢は、ずっと昔から変わってなかった。
 感動したのは、やはり「ヨシュア・トゥリー」からの曲が多かったが、中でも大好きな「Where the streets have no name/約束の地」には涙が出た。一体、この歌は、どうやって生まれたのだろうと思う。U2はメンバー全員で曲を作り、ボノが詞を書いているが、全員が納得できるまで何度も何度も曲を書き直し、一度できあがったものでももう一度演奏し直すという。曲が完成する瞬間は、それまでとは全く違った特別な感覚になって、それで完成するらしい。僕はこの歌を聴くと、何もない荒野の中を彷徨いながら、自分のいるべき場所を探し求めている人々のことを思う。心身共にボロボロになりながら、それでもその名もなきすばらしい場所を探しに行こうとする。「そこへぼくが行くときは きみと一緒だよ それがぼくにできるすべて」という歌詞が終わりの方にある。人生と愛の歌なんだと思う。「一体どこまで行けば、僕もそこにいけるのだろう?」と思うことがある。きっといつか「約束の地」に辿り着けるはずさと、この歌は励ましてくれる。それを感じるとき、自然に熱いものがこみ上げてくるのだ。
 アンコールは、確か「Vertigo」だった。前半で一度演奏してるのだが、もう一度同じ曲で締めくくる形である。「Vertigo=めまい」がするほど、すばらしいライブだった。
 ボノは、85年に行われた飢餓救済イベント「ライブ・エイド」への参加をきっかけに、貧しい国々、特にアフリカへの支援をつづけている。現在はエイズ対策に精力的に取り組んでいる。もはや死の病ではないといわれるが、予防も治療もできず1日に8千人が亡くなっているという。またアフリカ諸国では、5歳の誕生日が迎えられない子供が約2割近くいるという。ライブでは、日本のNGO連合による貧困撲滅キャンペーン「ほっとけない 世界のまずしさ」をステージから紹介し、来場者に白いリボンが配られた。音楽が単なる職業や趣味ではなく、人として生きることと全く一緒にある人である。