The Verbs
JAPAN TRIP 2010
ShibuyaC.C.LemonHall
2010.10.25
奥田民生は相変わらず忙しそうだし、いい仕事をして楽しそうだ。
2007年には陽水さんとのコラボで「ショッピング」と「ダブル・ドライブ」という2アルバムまとめての初ライブツアーを行い、2009年には16年ぶりとなるまさかのユニコーン再結成に話題騒然となった。その間にもソロ活動「Fantastic08ツアー」や映画「僕らのワンダフルデイズ」(09)の音楽アドバイザーをやったりもし、脂ノリノリである。そして今年は、「ひとりカンタビレ」があった。残念ながらこのツアーのチケットは入手できなかったが、ライブ会場を宅録風景に見立て、まずステージ上でカレーライスを食うところから始まり(笑)、民生の頭の中にある音楽を、ドラムを叩きベースを弾きと自分一人で全楽器を演奏、多重録音しながら、1つの楽曲を完成させていくという前代未聞のライブだったのである。大野ケイスケ氏の密着ルポを読むと、やはり容易なことではなかったのだと、改めて天賦の才に感心してしまう。その興奮冷めやらぬうちにThe Verbsである。すっかり忘れてしまっていたが、2006年にファーストアルバム「And now…」の国内盤発売をひっさげて来日ツアーが行われ、今年9月のセカンドアルバム「TRIP」のリリースに合わせてジャパンツアーが組まれている。今回から民生が正式加入したらしく、現在、3枚目のアルバムが制作中だそうだ。
ここに「時差」があってややこしいのだが、今回のセカンドアルバム「TRIP」は昨年11月に完成していて、日本版のリリースが約1年遅れとなっている。その辺の事情は調べてないが、民生の正式加入は今回のJAPANツアーからで、現在制作中のアルバムにも正式に参加しているということらしい。「TRIP」に民生の曲はないが、10曲中5曲でギター参加している。ギタリストとしても評価が高い民生だが、正直、自分にはあまたいる他のギタリストとの巧さの違いはよくわかならない。民生だから聴いてるだけである。
さて、The Verbsであるが、世界最高峰とも云われるドラマーでありプレイング・マネージャーとしても有名なスティーヴ・ジョーダンがパートナーでもあるミーガン・ボスと結成しているバンドである。民生のソロデビューアルバム「29」(95)の中で「息子」や「ルート2」など6曲でスティーヴ・ジョーダンがドラムを叩いていて、以来、「FAILBOX」「CUSTOM」…とつき合いは続いている。The Verbsの歌は大部分がミーガン・ボスによるものである。「稀代のメロディ・メイカーである」とライナーノーツには書かれているが、個人的には好みではない。彼女のボーカルもである。民生がいなれば絶対にアルバムを買ったり、ライブに行くこともないだろう…。
開演予定の15分前、前座が3曲ほど演奏した。いわゆるハードロックというジャンルだろう。何を歌っているのか聞き取れないし、単にうるさいだけだったが、これからいよいよだという雰囲気づくりには一役かっていたと思う。定刻を20分ほど過ぎて、バンドメンバーが登場した。向かって右側に民生とベースのピノ・パラディーノ、左側中央寄りからスティーヴ・ジョーダン、そしてミーガン・ボスという配置。1曲目はアルバム「TRIP」と同じく「WORLD'S A MESS」だった。先にも書いたとおり全く好みではない歌なので、何か他の部分を楽しめればと思って聴いていたが、それはそれでやはり相当かっこよかった。世界最高峰といわれるドラムにも集中して耳を傾けていたが、他のドラマーとどこが違うのかよくわからずとも、そのグルーヴ感はかなり心地よいものである。曲は「TRIP」からが中心だが、知らない曲も案外多かった。新曲だろうか?今回、スティーヴ・ジョーダンのMCはほとんどなく、民生が時々コメントして会場を沸かせてたくらいで、演奏に集中している感じだった。ひとしきり演奏が続いた後ミーガン・ボスがステージから抜け、民生の「わかります」と「たびゆけばあたる」をやったのだが、このときが一番盛り上がったような感じである。「ひとりカンタビレ」に収録されているこの2曲は、ライブ用にギターソロが長めにアレンジされていて、ものすごくかっこよかったし、気のせいかスティーヴ・ジョーダンが自身のバンドの曲以上に楽しそうにノビノビと叩いているようにみえた。4年前のライブでも民生の歌を演奏するコーナーがあって、あのときはミーガンのボーカルに比べてやや迫力不足に感じたが、今回は違っていた。民生はボーカル力ばかりか、ステージ上での存在感が俄然大きくなっていて、実に堂々としていた。2曲終わったところで、「これで十分と言ったんだけど、スティーヴがもう1曲やれと言うので」という前振りの後、ユニコーン時代の「ターボ意味無し」をやった。ゆったりとした重厚な音が、The Verbsにもピッタリという選曲だった。ボーカルが民生になった途端、民生のライブになってしまったが、後半はまたミーガン・ボスに戻った。前回のようなスティーヴのドラミングを披露するようなコーナーもなく、やや単調な展開ではあったが、2時間の音楽の「旅」が味わえた。このツアーが終わるとすぐに民生のツアー「MTR&Y 2010」が始まる。そちらは6回申し込んで何とか1回だけチケットが取れたので、今から楽しみにしている。次々と新たな挑戦を続ける民生の音楽から目が離せそうにない。