The Verbs + 奥田民生


1st tour 06

at 横浜BLITZ
in 2006.12.22
 2006年は、仕事の都合などもあって民生のツアーに行きそびれてしまった。その前年のツアーがちょうどソロ10周年記念で、10年間連れ添ったバンド・メンバーを変えて初のツアーだったので、長年親しんだ「音」がなくなってしまったと淋しい気がしていた。「さて、2年目はどうなったんだろう?」と、行くのを楽しみにしていたのだが…。
 そんな年の瀬にうれしいニュースがあった。民生がライブをやるという!早速、チケットを予約。抽選の結果、なんとか入手できた!それが、今回の「The Verbs+奥田民生」である。これまでもO・P・キングとか井上陽水奥田民生などコラボレーションも盛んだが、いよいよ今度は世界進出らしい!折しも民生プロデュースで世に出たパフィーがアメリカでアニメ化されて、大ブレークしている昨今であるから、またまた「民生の時代」が来ているのかもしれない。
 そのThe Verbsのことは、全く知らなかった。スティーブ・ジョーダン(ds)とミーガン・ヴォス(vo)が結成したバンドで、2005年にデビュー・アルバム「And now…」を発表しているということはあとで知った。スティーブは、NY随一のドラマーであり、キース・リチャーズのソロ・アルバムをはじめ多方面で引っ張りだこの名プロデューサーであるそうだ。民生のソロ・デビュー・アルバム「29」に参加して、「ルート2」「ハネムーン」「息子」「これは歌だ」「BEEF」「人間」で、キレのいいドラムを叩いているのがスティーブだった。アルバムはミリオンセラーを記録し、そこから民生のだらだらとした快進撃が始まり、僕もその音楽と生き様をずっと追っかけてきた。今回のライブでは、民生の歌もやると聞いてたのでとっても楽しみにしていた。
 さて、横浜BRITZ。初めてだったが、行ってみたらときどき行く「109シネマズ」のすぐ裏だった。この日も「007/カジノ・ロワイヤル」を見てからライブという映画とのセット・コースだった。映画の方がかなりよかったので、ライブが色褪せてしまうかなと心配になっていたのだが、さてさて…!
 7時の開演時刻を20分ほど遅れただろうか。1ドリンクを飲み終えてだいぶ経ってから、ようやくメンバーが登場した。前もってCDを聞いてなかったので、どんな音楽なのか全然知らなかったし、ボーカルが女性というのも、ステージをみて初めて知った。演奏が始まった。民生はステージの向かって右側でギターリストをやっている。なんだかちっちゃい感じがした。う〜ん、なんと懐かしい音なんだろう。言ってみればビートルズ時代の音だろうか。キーボードがいなくて、メンバーの他に、ベースとギター、コーラスの3人がサポートしているだけのシンプルなバンドだった。しばらくThe Verbsの曲が続く。民生の作る歌に比べると、とても単調だ。「スティーブって、一体どこが凄いんだろう?」という気もちょっとしたが、にもかかわらず、結構、楽しめていた。そして、段々とスティーブの大物ぶりがわかってきた。まるで自宅でくつろいでるかのようにリラックスしていて、ふつうに冗談をいい、メンバーと会話をし、会場に話しかけ、なぜか大笑いし、そして、楽しそうに力強いドラムを叩く。単調に思える曲もあるが、激しく複雑なドラミングをたっぷり聞かせてくれる場面もあった。そのとき会場は、すっかり魅了し尽くされ、延々とスタンディング・オベージョンだった(もともと立ち見だけど)。で、ようやく民生が歌う番になった。ジョーダンが「初めて民生と共作したんだ!」とコメントすると、それは「ベースボールでいうと」だった。何の変哲もないと思って聞いていたミーガンのボーカルがすごかったのだと、民生の歌が始まってわかった。いつも民生の声には圧倒されるが、ミーガンのすぐあとで聞くと、そうでもなかった。まあ「ベースボールでいうと」は、熱く歌う曲でもないのだが、これをライブで聞くのは初めてだと思うのでうれしかった。つづいてギターをアコギに持ちかえて歌ったのが「野ばら」だった。最高によかった!キレイなメロディーだし、詞の世界がとても日常的でありながら、つい見過ごされがちなほのかな恋心をよくとらえていて、本当に好きな歌である。続いては、「ルート2」。もともとライブで盛り上がる歌だが、スティーブのドラムもすごかった!スティックが折れるんじゃないかというくらい全身で叩きつけるドラムである。その次が意外な選曲だった。ユニコーン時代の渋〜い曲「ターボ意味無し」だった。民生は当時より声が野太くなっているので、むしろ今の方が歌に合っているようだ。滅茶苦茶カッコイイ選曲である。次が新曲!「今日が初めてだよ!」ってスティーブのMCがあった。タイトルは「海のボード」。夏っぽい感じの爽やかな曲調で、とても親しみやすい感じがした。
 民生の歌はそこまで。「え、これだけなの?」という気はした。もっともっと聞きたかったが、あくまでThe Verbsのライブなのである。再び、ミーガンが歌う。確かにいいボーカルだ。民生とスティーブが曲を書き、ミーガンが詞を書いたという「New York/Tokyo」もやった。まあ、個人的にはどうという感じもしないのだが…。アンコールは、やはり「Beef」。それからThe Verbsの曲があって、終わった。民生の歌は期待していたよりも少なかったが、でも、存分に楽しめて完全燃焼した。たぶんそれは、リーダーであるスティーブのオモロイ人柄とサービス精神と、パワフルなステージワークのせいだろうと思った。モヤモヤした気分がすべて吹っ飛ぶような夜になった。
帰り道、みなとみらいの夜景を眺めながら、隣駅までゆっくり歩いた。昔、海だったこの場所に、たくさんの家族連れやカップルが集まり、クリスマス前の華やいだ雰囲気に包まれていた。年の瀬のこの雰囲気がとても好きだ。1年が終わる淋しさと、新しい年を迎える楽しみな気持ちが混じる。来年もいい年になりますようにと思いながら、その場を去るのがちょっと名残惜しかった。