”そうだ 原宿、行こう。” Acoustic Tour  bird
VACANT 2013/5/12 
sun 18:05-20:30

 
 VACANTには、初めて行った。「空っぽ」って意味らしい。原宿、竹下口を竹下通りと反対側に入って2〜3分。入場して思わず「エッ!」と驚いた。小学校の教室ほどの小さな空き部屋に座布団が同心円状に並べてあって、その周りを囲むようにイスが幾つか置いてあるだけ。100名までは入らないだろう。車座になった観客の真ん中にイスが2つあって、それがいわゆるステージということか。すっごく、近い。以前、逗子海岸で見た「音霊ライブ」並みに近い!そうだそうだと色々な街でやるこぢんまりしたアコースティック・ライブを「そうだツアー」というらしいが、東京開催は今回が初めてとのことだった。

 目が覚めるような青いドレスのbirdがギターリストの樋口直彦さんと共に登場。相変わらずちっちゃいが、独特のエネルギーを感じる人である。仏像マニアのみうらじゅんが見初めただけあって、いかにも観音様風の髪型もユニークだ。樋口さんは3月に発売されたアコースティック・アルバム「HOME」でギターを弾いている人(いつもの田中義人ではない)。後で調べてみたら、パリスマッチとも仕事をしていて、自分の好みに合うのも納得だった。1曲目は大好きな「夕暮れの少年」。言葉にしてしまうと陳腐だが、歌とギターだけで他に何もいらないシンプルかつ濃密な音楽。「これは素晴らしいぞ!」「今、一番聞きたい歌はこれだ!」って気分にたちまちはまる。まるで温泉に浸ってるような快適さである。

 birdは相変わらずよくしゃべった。相方の樋口さんは大人しそうな人だが、徐々に調子が出て、途中から会話も弾んだ。「会場の反応がいいので、とてもやりやすい」とも言っていたが、これだけ小さな空間なので、客席の反応は歌やギターにダイレクトに影響するようである。観客もそれを感じて、少しずつテンションを上げていった感じである。未就学児は無料で入場可ということもあって、赤ちゃんや小さな子供が何人も来ていた。彼、彼女らが演奏とは何の関係もなく声を出したりするのが案外絶妙なタイミングだったりして、ずいぶんと場の空気を和らげてくれた感もあった。

 普段バンドで演奏している歌を弾き語りでやるライブは少なくない。その歌が生まれたときの原版を聴くような面白さや歌により集中できるよさがあるが、単調になりがちな面もなくはない。しかし、今回の場合、弾き語りではなく、歌とギターが別々というところに実に大きな意味があったと後で気付いた。技術的なことはよくわからないが、弾き語りのギターの場合は、間奏は別として、歌っているときに弾けるフレーズにはおのずと限界があるのではないだろうか。樋口さんのギターは、編曲自体がとても凝っているせいもあるが、1曲の中でもいろいろな弾き方で構成されていて、とても表情豊かだった。曲によっても色々変わるので、単調になることは全くなく、ずっと聴いていたいくらい飽きない内容だった。個人的にMCがたくさんあるライブが好きだが、その点、birdは話題豊富で面白いし、このスタイルで2時間半ガッチリやってくれるのは稀だと思う。どの歌もすべてよかったが、この日、一番の収穫は「スパイダー」だったかもしれない。ハードボイルド風と曲紹介していたが、確かに紫煙が目に煙るような渋いギターが途轍もなく格好良かった。

 アンコールは、観客から「いちにのさん」で同時にリクエストして、樋口さんが聞き分けて曲目を決めることになった。「これ難しいんですよ」と最初にやることになったのが「髪をほどいて」。そして、『ちょっと噛んでましたが、「ハイビス…」と聞こえました』と、僕がリクエストした「ハイビスカス」を2番目にやってくれた。とても好きな歌だが、アコースティック向きではなかったかな…。それから、birdの真後ろにいた常連さんのリクエストで「LIFE」。そしてデビュー曲「SOULS」が最後だった。「こんなに素敵な歌がデビュー曲でよかった。まだまだ、歌いこなせてません」と言いつつ、とてもすばらしい歌声を響かせて、birdは去って行った。デビュー15周年。僕のファン歴は8年ほどだが、これからもライブは欠かさず行きたいなと思いを新たにした。