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「人生は点」
「人生は点なんだよ。わかってんのか〜」
と彼は髭モジャの顔を弛ませて高らかに笑った。
点と点を結んで線が描ける。
点を打たなけりゃ、何も生まれないんだよ。
という彼の言葉が鋭い釣り針のように私の心をスパッと釣り上げた。
釣り上げられた私はテーブルの上でジタバタもできずに、ただただ口をパクパクさせていた。
私が歩いてきた道に果たして点があったのか。
点と点を結んだ線で何か描けているだろうか。
「スローフード」がテーマだったが、テーマは要らないと彼は言った。
テーマのないところから、くつろいだりとりとめのない話をしているうちに、テーマが出てくる。
それでいいと。
説明的でない方がいいと。
というわけで、とりとめのない話が続いた。
2時間、3時間と話しているうちには、場の空気も変わってきていた。
「では、シンボルマークを作ろう」という話になった。
機が熟したというのか、空間が何かで満たされて、3人の想いが一気にスパークするような感じだった。
真新しい紙の上に点と線が描かれてゆく。
今まで話していた断片的な事柄が、ここで一気に凝縮されてゆく。
年輪、心、双葉、種、波紋…いろいろな抽象理念が形に置き換わっていった。
そうやってあっという間にできあがったマークは、絵画であった。
私は初めて絵を描いたような気持ちだった。
私たちが店を出る頃には、午前2時を回っていた。
思えば、自分は他人のつけた点にどれだけ気付いていただろうか。
そこにどれだけ目を向けていただろうか。
その目を養わなければ、自身の点もまた見えないのではないか。
中島みゆきの「地上の星」のようでもあるし、
黒と白の点を打ち合う「ヒカルの碁」のようでもある。
自分にも他人にも点はあるように思う。
それがどのようにつながるか、今はわからないが、
それを求めてゆくのである。
時間がかかる。
自然にスローになってゆく。
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