著者:岡本太郎
昭和29年に書かれ、当時大ベストセラーになったこの本を読んで大きな影響を受けたと語る著名人の話を今でもときどき耳にする。
芸術とは何か。太郎氏曰く、創造である。芸はこれと正反対なもので、古い形を受け継ぎ、定まった形の中に完成をみるもので、芸術と芸は明確に区分しなければいけないものだ。たとえば芸術について、そんな風にキッパリ断言されると、わからないことまでわかってしまうくらいわかりやすい。また、芸術の本質は技術であり、芸の本質は芸能であるともいう。曰く、芸術には技能は必要でなく、センスとたくましい精神があればいつでも誰でも芸術家になれると。太郎氏はこのように明快な理論と力強い文体で、芸術を一部の特定の人間から、すべてのふつうの人々に開放しようと懸命に語りかけてくる。しかも、この本は芸術を題材にしつつ、同時にもっと根本的な日本人の生き方そのものに焦点をあて、時に激しく批判している。半世紀近く前に書かれたものが、まるで色あせることなく、全く今日の問題として読める本である。
僕の好きな太郎氏の言葉に、こんなのがある。
「自分自身がオモチャなのだから、自分で、自分というオモチャをくるくる使って遊ぶ。」
本当は2度とない貴重な毎日をなんとなく過ごしてしまっていたら、この本で喝を入れるといいでしょう。
面白くて、人間のためになる一冊です。
(光文社文庫)