「耳の穴」1周年記念ライヴに行って、私が感じたことを一言で云えば、「今、在るがまま」の後藤勇だったということだろうか。アコギでの弾き語りを中心に、サンプラーを使ったり、映像を流したり、朗読や絵画との競演があったりと趣向に富んでいて、飽きることなくあっという間に1時間半が過ぎたという感じだった。今までのライヴの中でも完成度の高い内容だったと思う。いろいろな唄があり、それぞれ色があって、単純に楽しめたという感じ。ただ色があると書いたけれど、実際何色があったかと考えてみると、不思議と全体がモノトーンのようなイメージが浮かぶ。
「何か、メッセージはあっただろうか?」
後藤氏のライブに行くと、私はいつもそれを探す。本人の意図に限らず、何かを感じて1つそれを見つけるのだが、今回はそれらしきものが見つからなかった。今までのライブでは必ず、必死でもがいている人間が唄の間に見え隠れしたのだが、今日はそういう切羽詰まったものがなく、一貫してリラックス・ムードだった。自然体だったということだろうか。歪んだ音も力強いカッティングもやわらかく、まるで「素焼」のような自然な仕上がりに感じられた。
ただひとつ、「風来」は違った。平野氏の映像と後藤氏の音。静かに、ゆっくりと、物語が心に突き刺さるような感覚。あんな風に恋をし、僕らは、どこからか来て、どこかへと旅立って行くんだ。「風来」と共鳴していたのが、「行ってくるね」だった。私の中では、このふたつが強く印象に残った。
今日、何年かぶりの大雪が町を真っ白に変えた。その大雪がもう帰る頃には雨に溶け、消えはじめる。たった今見たライヴも雪と同じようなものだろう。すぐに過去になって消えて無くなってしまう。それでも心に突き刺さった感覚は、残る。