♪STING
「MY SONG」
幕張メッセ
2019年10月10日(木)19:40-21:20/B13ブロック33番

 「成功とは何だ?」と自問自答するとき、よく浮かぶ顔の一人がスティングだ。あくまで個人的見解だが、名声、人気、富、才能、社会貢献、容姿…、ざっと思いつくあらゆる面において「成功」を感じさせるカッコイイ人である。スティング自身の言葉を借りれば、「僕はいろんなタイプの音楽をかき集めてフレッシュな方法で新しいものを付け加えていくことが好きなんだよ。この地球上に新しいものなんて何もないんだ。これを混ぜ合わせていく以外はすべてやりつくされてしまっているからね。いろんなものを混ぜ合わせるのがうまいというのが僕の才能ってところかな。」「ジャズでもフォークでも、ピュアな音楽にはぼくはまったく興味がない。ぼくが興味を惹かれるのは、ジャズ・ミーツ・ポップ、ポップ・ミーツ・クラシックといったようなハイブリッドな世界なんだ。」その意見に、僕も賛成だ。そして、多くの人が同じようなことに躍起になっているようにも見えるが、それを趣味の領域を超え、社会的インパクトのあるレベルで多くの人の共感を生み出してきたのがスティングなんだと思う。ライブ会場の熱量がそのことを如実に物語っていた。
 68歳のスティングは、相変わらず筋肉質な体躯と野太く甲高い歌声が健在だった。ポリス時代のヒット曲とソロになってからの名曲をバランスよく配置したセットリストは、1つ1つがライブ用にアレンジされ、聴き応えがあった。ポリスの楽曲は、オリジナルメンバーによるものの方がいいような気もしたので、その分、ソロ以降の楽曲の方が僕にはしっくりきた。とりわけ、「Desrat Rose」とか「Brand New Day」は、今では一番好きかなと思える。「Every Breath You Take」を聴いているときには、なんとも不思議な感覚になった。この曲がポリス最大のヒットになった頃、僕は高校生だった。モノクロのPVはとても格好よく、きっと音楽史に残る名曲になるんだろうと誰もが思っていた。当時、スティングはまだ31か32歳だ。今からみれば、ほんの若造だったのだ。まさか、これほどのスーパースターになるとは、本人だって予想してなかっただろう。その楽曲を68歳になった本人が歌っている姿を見ていると、一人の人間が体現する進化の過程を見ているようだった。その30数年間をずっと見続けてきた自分の半生とも重ね合わせ、感無量という気分になった。
 スティングのライブとは関係ないが、ちょうど同じ頃、ラグビーワールドカップが日本で開催され、大きな話題になっていた。とりわけ、日本代表の快進撃が話題になり、「にわかファン」が流行語になるほど日本中がラグビーに夢中になった。僕もにわかファンの一人である。今までほとんどルールも知らず、なんとなく野蛮なイメージすら抱いていたが、実際はその逆で、とても紳士的かつ頭脳プレーを強いる複雑なスポーツだった。ノーサイド精神も象徴的である。試合が終われば敵味方が握手し、相手を讃え合う。ゲーム中も非常に激しいタックルをしながら怪我しないように、お互いが細かなルールを遵守しているのだ。ラグビー最大の特徴は、メンバー15人の役割分担にある。スクラムで力を発揮する100kg超の選手、高いボールを受ける2m超の選手、素早い動きが求められる小柄で俊足な選手など、個々の力を組み合わせたチーム力重視のスポーツである。「ミスターラグビー」と呼ばれた故人、平尾誠二氏の著作「人は誰もがリーダーである」に次のような主旨のことが書かれていた。「高度成長期には大いに機能した方法、すなわち上からの命令を正確に行えればいいというのではなく、スピーディーかつ柔軟な対応が求められる現代社会においては、組織を構成する個人個人が状況を把握し、自分で考え、正しく行動できるようにならなければ、これからは生き残っていけない。」この平尾氏の意見に僕も賛成だ。現実の職場はそれとは真逆のいかにも昭和の手法を踏襲していて、非効率で不自由な感じがしていた。一人一人に得手不得手がある事実に目を向けて、ラグビーのようにポジションに当てはめて活かそうとしなければ、「君たちはダメだ」と言うだけの単なる批評でしかないように僕には思える。スティングとラグビー、その共通点は、どちらもイングランド生まれであるところ。我が家で飼ってる犬も車もイングランドにルーツがあるし、日本と同じ小さな島国、いつかは行ってみたい国である。
 話はまた変わる。少し前になるが、 「病死の警察犬 しのぶ」という新聞記事に目がとまった(R1.10.18)。神奈川県警が警察犬活用を始めたのは1972年。3頭からスタートし、現在までに88頭が捜査に協力してきたという。そのうち31頭が病気で現役中に亡くなっている。おそらくは、犬なりに神経を研ぎ澄まし、緊張を強いられる仕事なのだろう。彼ら自身が選んだ仕事ではないが、一生をその任務に捧げ、殉死に至った生涯に感銘を受ける。今年4月に亡くなったシェパード・アリス号の場合、約600件に出動し、胃腸を患いながら、亡くなる1ヶ月前まで行方不明者の探索などにあたっていたという。人に忠実であろうとする犬の習性を思うと、感動すら覚える。欲望にもいろいろある。平時はともかく、いざというときに自己保身に走る姿を目の当たりにするとうんざりする。そんな犬にも劣る人間にならないように、僕も修練を続けていきたい。例えスティングのレベルまで辿り着けないとしても、ベクトルはそっち向きだ!

set list
1
Message in a bottle
2 If I ever lose my faith in you
3 Englishman in New York
4 If you love somebody set them free
5 Every little thing she dies is magic
6 Brand new day
7 Whenever I say your name
8 Fields of gold
9 If you can't find love
10 Shape of my heart
11 Wrapped around youe finger
12 Walking on the moon
13 So lonely
14 Desert Rose
15 Every breath you take

anc1
16 King of pain
17 Roxanne
18 Next to you

anc2
19 fragile