

Sergio Mendes
東京国際フォーラム
2006.9.29
セルジオ・メンデス(1941〜)。
ボクが初めてその名を知ったのは、「Never gonna let you go」だった。衝撃だった!なんて美しい歌なんだろう!1983年の全米チャートで4位になるヒット・ナンバーである。当時は、ほとんど洋楽しか聴いてなくて、ロックもポップスもレゲエも手当たり次第聴いていた。ブラジル・ニテイロ生まれのセルジオ・メンデスは、もともとボサノヴァの人だと知って、ボサノヴァを聴きかじったり、ジャズの名盤、ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」を聴いたのもその頃だった。でも正直なところ、その頃はジャズというと大人が聴く音楽というイメージがあって、実際よくわからなかったのだけど…。
セルジオ・メンデスは久しく聴いてなかったが、今年1月に約10年ぶりの新作が発表された。ブラジル’66でアメリカデビューしてちょうど40年である。「timeless」というアルバムタイトルは、ブラジル音楽は時代に関係なくすばらしい魅力をもっているという意味が込められている。「今までやってきたものとは違うものを作りたい」と思っていたセルジオは、ヒップ・ポップの人気グループ「ブラック・アンド・ピーズ」のリーダー、ウィル・アイ・アム(1975〜)と出会い、セルジオの大ファンだったウィルの希望で、一緒にレコーディングすることになった。そのレコーディングの出来に満足したセルジオは、これこそ自分がやりたいことだと思い、ウィルと一緒にアルバムづくりを始めたのが2004年だという。ボサノヴァとヒップ・ホップの融合というユニークな試みは、世代差も超越した仕上がりになった。そういう意味でも「timeless」なのである。
さて、東京フォーラム。客層は、わりと高めで、40代〜50代が多いだろうか。ここ数年、チケットはネット購入しているので、座席は郵送されてくるまでわからない。だから、当たりもはずれもあるのだが、今回の1階9列41番は、大当たりだった。ステージから9列目でほぼ真ん中。すごい臨場感である!「しかし、1万円は高いなぁ」と正直思っていたが、演奏が始まるとそんな気持ちは一気に吹っ飛んだ。すごい!!「なんなんだ、この音楽は!」年に数回程度だが、これまでに国内外の様々なライブをみてきたが、ここまで密度の濃さを感じる「音」は、そう滅多にあるものではない。もちろん、曲自体がとてもいいのだが、演奏がまた完璧なのだ。コーラスは女性3人だったが、その声の美しさといったら驚きものだった。「どうして、こんなにも美しい声が出せるんだろう?」って感じである。セルジオがキーボードを弾き、他にパーカッションが2名、ドラムス、ラッパー、ベース、ギター、シンセサイザーが各1名という構成だが、とにかくすべての音が完璧なハーモニーを作りだし、快適なことこの上なしである。本当にうっとりしてしまった。
演奏は間髪入れず、ほとんどメドレーのような感じだった。「timeless」からの曲が中心かと思えば、結構、古いボサノヴァの名曲が新しいアレンジで演奏され、どの曲もすべてがとても新鮮で、惚れ惚れするほどかっこよかった!演奏だけがどんどん続いても全然飽きないのだが、さらに余興みたいなこともあった。タンバリンをいろんな叩き方で鳴らしたり、口だけでいろんな効果音を出すラッパーの独演があったり、「ビジュアル・タイム」では、パーカッショニストが音楽に合わせて逆立ちをしたり、とんぼ返りをしたりという不思議なパフォーマンスもあった。とにかく、構成がよく練られていて、とてもすばらしかった。世界中で活躍しているだけに、やはりステージパフォーマンスのレベルは、かなりのものである。地球の裏側から来てくれて、しかもこの内容だと、1万円はお買い得といえる。
ノンストップで1時間半ほどやって、すぐにアンコールで「マシュ・ケ・ナダ」があった。最も有名な歌だが、もともとはブラジルのギタリスト、ジョルジ・ベンが1963年に録音してヒットさせている。それをブラジル’66が1966年にカバーしたのが、大きなヒットになったのである。アレンジャーとしてのセルジオの才能は、ここから始まったといっていいのかもしれない。ヒップ・ホップ・ヴァージョンの新しい「マシュ・ケ・ナダ」に続いて2曲あって、約1時間45分のライブは終わった。まさに夢のような、あっという間のステージ。いつも好きなアーチストのライブに行くので、どのライブもとても満足するのだが、それにしても、こんなに短く感じることも珍しい。
今度来日しても必ず行きたい、そんなライブの1つとなった。