SKYEは、鈴木茂、小原礼、林立夫の3人が高校時代に組んでいたアマチュアバンドで、2019年に松任谷正隆(マンタさん)を加えて再結成されたとwikiにある。もう驚くほかない!高校生バンドのメンバー全員が一流のミュージシャンとして活躍して、約50年ぶりに再結成して、メジャーデビューしてしまったのだから。メンバー全員が1951年生まれの70歳である。会場も同年代の人でにぎわっていた。「お~、久しぶり~」、「意外と若いじゃん」などという会話が飛び交い、さながら同窓会のような熱気に包まれていた。なのだが、個人的には、あまり興味はなかった。鈴木茂がいたはっぴいえんど、鈴木茂と林立夫がいたキャラメル・ママ、小原礼がいたサディスティック・ミカ・バンドなどは僕の好みではなく、むしろカミさんが好きなジャンルだった。深く考えずに何となくチケットを買ったのだが、あとでそれを知ったカミさんは、自分も行きたかったと非常に残念がっていた。僕はただ、ゲストが奥田民生、荒井由実、尾崎亜美というのが気になっただけだったのだ…。
 そもそも興味がないので、SKYEの曲は全く知らなかった。演奏は超一流で全員が歌うのだが、いわゆるボーカリストではないので、そこは全く物足りない。MC役のマンタさんも話していたが、自分たちだけでは無理なので、豪華ゲストに来ていただいて、3段ロケットのように盛り上げたいということで、最初のゲスト、奥田民生が登場した。民生はソロでのライブを久しくやってないので、彼の生歌を聴くのは久しぶりだった。どんな選曲をするか興味津々だったが、「BEEF」、「イージュー★ライダー」、「さすらい」は妥当なところだろう。「BEEF」より「愛のために」の方がよかったと個人的には思うが、たぶん、民生の類い希なるバランス感覚で判断したのだろうから間違いないと思う。僕にとっても、人生を共に過ごしてきた歌たちであり、その時々の思いが蘇り、感無量という気持ちになった。尾崎亜美が選んだ3曲はあまり知らなかった。そして、ユーミンは、敢えて荒井由実名義である。ユーミンもほとんど聴いてこなかった。好みではなかったが、「どうしてそんなに人気があるのか?」という下世話な好奇心から、2011年の「Road Show Tour」へ行って、それから少しずつ聴くようになった。彼女が荒井由実時代に残したアルバムはわずか4枚である。1枚目から順に3枚目まで買って聴いているが、いずれ名曲ばかりで、今になってファンのような感じになっている。
 さて、ユーミンがステージに登場すると、ひときわ大きな拍手が沸き起こった。さて、何を歌うのか?「返事はいらない」、「あの日にかえりたい」という選曲だった。3曲目の「HONG KONG NIGHT SIGHT」は松任谷由実になってからの曲らしいが、滅多にステージではやることのない夫婦デュエットだった。お互いにステージがあるから一緒にやることは滅多にないし、もしかしたら、今日が最後かもしれないとマンタさんも言っていた。ファンには堪らない最高のプレゼントになったに違いない。ユーミンは今日も収録してきたという「ウソラジオ」というのをステージ上で再現していた。ある人を動物に例えるコーナーがあって、鈴木茂がアルパカ、小原礼がネコ、林立夫がガゼルで、マンタさんがウサギかトナカイって話だった。ウサギはウサギ年だからかなってユーミンが言ったら、「メンバー全員、ウサギ年だから!」とマンタさんに突っ込まれていた(笑)。ユーミンとメンバーとの付合いも長く、その中でも最初に出会った鈴木繁とは15歳のときだったというから本当に長い!最後に会ったのがマンタさんだったらしく、「残り物には福がある」と言ってた。70近くになってそんな風に言ってるユーミンが微笑ましかった。その後しばらくSKYEだけの演奏が続いてから、今度はゲスト全員が登壇した。ステージに向って左から亜美、由実、民生である。この3人が並んだってことで次の曲紹介がマンタさんからあった。大貫亜美、吉村由実によるデュオであるパフィーをプロデュースしたのが民生だと知っているファンには、衝撃が走った瞬間だった!そのつもりでゲスト選定したのか、たまたまそうなったのか知るよしもないが、パフィーのヒット曲「アジアの純真」、「これが私の生きる道」、「渚にまつわるエトセトラ」と畳みかけて、会場は総立ちになり、大いに盛り上がったのだった。さらに尾崎亜美が松田聖子に提供したヒット曲「天使のキス」を熱唱し、アンコールでは音楽史に残る名曲「卒業写真」をユーミンが歌い、3時間を超える濃厚なライブパフォーマンスは大興奮のうちにフィナーレを迎えたのだった。
 SKYEを再結成してから、小さなライブハウスでツアーをやろうという話をしていたという。ただ、歳も歳だし、これが最後になるかもしれないから、ホールツアーをやろうと我が儘を言って、お陰様で全公演ソールドアウトすることができたとマンタさんがファンへの感謝も交えて話していた。マンタさんの静かな語り口には、奇をてらうような大袈裟なところが一切なく、しかし内に熱い想いが感じられて共感するものがあった。ライブへ来るまで全く期待してなかった僕は、来るときとはまるで別人のように興奮しきっていた。日本の約50年に渡る音楽シーンを凝縮したかのようなレジェンドらが活き活きと自分たちの音楽を演奏している。その音楽は彼らのものだが、ファンのためでもあり、人間賛歌のようでもあった。こんな風に幸運や才能に恵まれた人達は滅多にいないだろうけど、あんな70歳になりたい、あんな夫婦が理想だという希望を感じさせる人達であった。たぶん、ここが一番の肝だろう。行ってよかったどころか、行かなきゃ大損するところだった!(笑)

set list
1. Less Is More
2. Dear M
3. Daydream
4. Reach Out To The Sky
5. どちらのOthello
6. BEEF
7. イージュー★ライダー
8. さすらい
9. 私は何色
10. 初恋の通り雨
11. マイ・ピュア・レディ
12. 返事はいらない
13. あの日にかえりたい
14. HONG KONG NIGHT SIGHT
15. ちぎれ雲
16 . 川辺にて
17. マイミステイク
18. アジアの純真
19. これが私の生きる道
20. 渚にまつわるエトセトラ
21. ISOLATIN
22. マシマロ
23. 天使のウインク
24. 14番目の男
25. ISOLATION
EN.
26. 卒業写真
27. Always
28. BLUE ANGELS

♪SKYE
~SKYE TOUR 2022~
Bunkamura オーチャードホール
2022年7月26日(火)18:00-21:15/1階19列15番