オープニングは真っ白なピアノを弾きながら登場!そして、ヒット曲が途切れなく続き、衣装替えの間もバンド演奏が続いて、次に登場したときはエレキギターを弾き、その次はドラムも叩くという大サービスだった。それがしばらく続いたあと、アコースティックコーナーがあって、4曲ほどやりますって言ってた。「次の曲は、えっ、またこの曲やるの?いい加減いいよという人がいても、私は歌います!」と言って歌ったのが「SWEET MEMORIES」だった。彼女の楽曲への愛を感じた。しかも、本当に雰囲気のある歌で、何度でも聴きたいと思う。これが4曲目だったので、そろそろ終わりかと思ったら、そこからリクエストコーナーというのがあって、これがすごかった!コロナ禍で始まったコーナーらしいのだが、話しちゃいけないからというので、会場のファンが持参したパネルに書いた曲を松田聖子が歌っていくというもので、今は定番コーナーになっているようだった。ステージの端から端まで移動しながら片っ端から伴奏なしで歌っていく。たまに「さよなら」とパスするのもあったが、ほとんどはすぐに歌い出していた。歌詞を忘れてることもたまにはあってハミングしてたりしたが、それはほんの僅か。そうやって20曲くらいは歌っただろうか。絶え間なく会場から声がかかり、それにもしっかり答えていた。「いちいち声をかけてくれて、ありがとうございます」と言ったあとで、「もちろん、いい意味ですよ!(笑)」と自分でフォローしていたのも可笑しかった。その辺の対話に素の松田聖子が垣間見えて、とても親近感が感じられた。とにかく人垂らしである。あんな風に一人一人を大切にする姿を目の当たりにしたら、きっと自分のことも大事にしてくれそうって、みんなを虜にしてしまうのも納得である。しかし、それを実行することは容易いことではない。まして松田聖子は「裸足の季節」でデビューした1980年から40年以上も続けてきたのだ。勿論、始めからできたのではなく、徐々に体得したのだと思うが、その才能、努力、魅力は他の追随を許さない唯一無二のものだろう。ちなみに1980年は山口百恵が引退した年である。日本の歌謡界における運命的なものを感じずにはいられない。
 アコースティックコーナーが終わると「次が最後の曲です」といって「赤いスイートピー」の大合唱になった。ところがそれで終わるわけでもなく、「青い珊瑚礁」を歌い、さらにメドレーがあって、アンコールもあって、2時間半たっぷりのサービス満点、内容も満点だった。ありがとうを100回は言ってただろうか。それも心から言ってるという感じである。武道館ライブは122回目らしい。そして、デビュー43年目になるのだそうだ。歳のことは言ってなかったが、61歳である。なぜか双眼鏡は禁止だったが、巨大モニターで見る限り、とても若々しくてキラキラしていた。独特のハスキーヴォイスもよく通る声だった。満面の笑みで本当に楽しそうだったし、「私はすごく楽しいのですが、みなさん、楽しんでますか?」と何度か言ってた。真っ白なワンピースやミニスカートも似合っていて、還暦という言葉が全く当てはまらない容姿だった。観客の7割は女性だろうか。松田聖子と同世代が多いようだった。似たような格好をしているオバちゃんたちがたくさんいた。松田聖子のような若々しさはないのだが、でも、素晴らしいことだと思えた。デビュー時もみんながこぞって聖子ちゃんカットを真似していたが、43年経った今でも彼女を倣っているなんて、本当にすごいカリスマだと思う。名実ともに日本を代表するアイドルであり、唯一無二の存在だろう。人を喜ばせる、そして感謝するその姿に心が洗われるような気がした。人としての成熟した理想像をみたような気もした。一人娘の沙也加さんが亡くなってまだ2年経ってない。ドン底の悲しみを味わっていると思うが、それでも前を向いて活き活きと歌っている姿にファンがどれほど励まされているかしれない。誰だって自分の幸せを最優先で追求していいと思う。しかし、自分のことを優先するあまり、不都合なことは他人に責任転嫁し、他人を攻撃したり、排除したりする人間は許しがたいが、なかなかなくならない。ここまで書いてふと、「もらった恩は石に刻め、与えた恩は水に流せ」という言葉を思い出した。亡き義父から聞いた言葉である。生前にも色々な話をして楽しませてくれたり、励ましてくれた人だったが、亡くなってからもずっとあの世から応援してくれているような気がする。自分の幸せを追求することと、自分さえよければいいという考えは、似ているようで相容れないはずである。ブルース・リーは「考えるな、感じろ!」と言ったけど、僕は考えるのが好きなので、なぜ、そう感じたのかを考える。松田聖子ライブでは、みんなが幸せになれるひとときを感じることができる。また行きたいなって思える素晴らしいライブだった。

set list
1 Rock'n Rounge(ピアノ演奏)
2 時間の国のアリス
3 秘密の花園
4 渚のバルコニー
5 天国のキッス(衣装替え)
6 チェリーブラッサム(ギター演奏)
7 Marrakech(ドラム演奏)
8 Strawberry Time
9 Wanna Know How(衣装替え)
9 あなたに逢いたくて
11 アコースティックコーナー
12 Rock7n7 roll Good-bye
13 Je t'aime
14 小麦色のマーメイド
15 SWEET MEMORIES
16 リクエストコーナー
17 赤いスイートピー
18 青い珊瑚礁
19 メドレー(裸足の季節、風は秋色、ハートのイヤリング、素敵にOnce Again、ピンクのモーツァルト、天使のウィンク)
20 夏の扉
ancore.
21 SQUALL
22 大切なあなた

♪松田聖子
~Concert Tour 2023 "Parade"~

武道館
2023年7月7日(金)18:35-21:00/2階南東P列20番