simon & garfunkel
the 2009 concert tour
20090711 tokyo dome
 1964年結成、1970年に解散。小学生のときからの親友だった二人は、解散後も何度か再結成したり、また解散したりを繰り返しながら、今、またオーストラリア、ニュージーランド、日本へのワールド・ツアー中である。今年68歳になるS&Gの二人にとって最後のツアーとも言われている。ちなみに「東京ラブストーリー」などで人気の漫画家、紫門ふみはポール・サイモンにちなんだペンネームというのは、知る人ぞ知る話。
 S&Gを初めて聴いたのはたぶん、映画「卒業」(67)でだったと思う。D.ホフマン主演のアカデミー受賞作だが、はじめはとてもHな映画かもしれないとドキドキしながら見た記憶がある。実際はそういうのではなく、純朴な青春映画だった。「エレーン!」と教会で叫ぶシーンが有名だが、エレーン役のキャサリン・ロスは当時の僕のアイドルだった、なんて話はどうでもよいか…。
 東京ドームはでかい!2階18列目の席からステージをみると、人間は米粒、いやゴマ粒くらいだ。ステージ横にスクリーンがあったが、それを双眼鏡で見てやっと表情がわかるというくらい遠かった。さすがに歳をとっていたが、しかし、歌声は若い頃のままという感じだった。独特のテノールが美しいアート・ガーファンクルの声は、まるでパイプオルガンのように響いてきた。これではポール・サイモンがかすんでしまうかと思いきや、ポールの声もまた味わいがあってとてもよく、さらに二人の声が重なると、あのS&Gならではの美しいハーモニーが生まれる。まるでケミストリーだった。
 1曲目は、「old friends(旧友)」。「70歳になったら どんなに妙な気がするだろう」という歌詞があるが、歌が生まれて40年も過ぎて、70歳になろうとする二人がまだこの歌を歌ってるって、本当にすごいことである。会場には彼らと同年代の人もかなり多く来ていたが、どれほど感慨深くこの歌を聴いてることだろうと思う。そして、こういうことを書きながら、いつか自分もそういう日を迎えるんだろうと想像し、人生の奥行きを感じてみたりしている。いや、そういう気分にさせる力がS&Gの歌にはあるようだ。たとえば、「スカボロー・フェア」。もとはイギリスのトラディショナル・ナンバーらしいが、S&Gならではのアレンジによって、これからも時代を超えて歌い継がれるに違いない。「ミセス・ロビンソン」のときには、「卒業」のワンシーンがスクリーンに映し出され、映画に狂ってた高校時代を思い出してとても懐かしくなってしまった。「アメリカ」もとても好きな歌だ。歌詞の中に、ポールの当時の恋人キャシーが出てくるこの歌は、アメリカを探しに来た恋人たちが主人公。大学時代にアメリカを探していた自分を重ねて聴いてしまった。バングルスがカバーして大ヒットした「冬の散歩道」のフレーズも極めてカッコイイし、彼らの代表曲の1つでもある「明日に架ける橋」のメロディーにも何か普遍的な美しさを感じてしまう。改めて、すごいデュオだったんだなと思った。そんな中で、一番好きなんだなと思ったのは、「サウンド・オブ・サイレンス」だった。イントロが始まった途端、会場が静寂に包まれた。万人が耳を澄まし、全身全霊でこの歌の音を受け入れようとしているようだった。静寂の音って、不思議だ。
ふと、少し前に何かで読んだ「孤立と孤独は違う」ということを思い出
した。人はそもそも孤独なもの。だから、誰かとつながりたいと熱望
するし、人と協調しようと努力もするわけで、それと孤立することは別
のもの。現代社会では孤独な自分を認めないことで社会性をもてず
に孤立する人が増えているのではないか、というような内容だったと
思う。静寂の音を聴くとは、ひっそりと独りで心の中で対話する行為
なのかもしれない。そういう静寂の時間がときどき必要と思う。
 アンコールは「明日に架ける橋」だっただろうか。改めて歌詞を読ん
でみた。「生きることに疲れはて みじめな気持ちでつい涙ぐんでしま
う時 その涙は僕が乾かしてあげよう 僕はきみの味方だよ どんな
辛い時でも 頼る友が見つからない時でも 荒れた海に架ける橋の
ように 僕はこの身を横たえよう」。こういう気持ちがある限り、僕たち
は希望を失わないでいられるような気がする。さすが、名曲。唯一無二のとてもすばらしいコンサートだった。