ジャンゴとグラッペリへ捧ぐ ジプシー・スウィング・ランデヴー
ストーケロ・ローゼンバーグ・トリオ with ティム・クリップハウス

guest:山中千尋


2013年3月3日 17:00〜19:10
めぐろパーシモンホール

 「僕のスウィング」(02)というフランス映画で初めて「マヌーシュ・スウィング」を知った。ロマ民族(ジプシー)の天才ギターリスト、ジャンゴ・ラインハルト(1910-53)がロマ(ジプシー)音楽とスウィングジャズを融合させて創った音楽。18の時、火事のヤケドでギターリストにとっては生命線ともいえる左手の薬指と小指に障害が残るも、独自の奏法を編み出し、ジャズ界の巨匠デューク・エリントンをはじめ、後世のギタリストに多大な影響を及ぼす。映画では、ジャンゴ後継者の一人であるチャボロ・シュミットが出演し、人間業とは思えない速弾きでノリのいいスウィングを披露している。映画鑑賞後ジャンゴにはまり、リビングやカーステで聴いていると、ジャズ愛好家だった義父が「ジャンゴか〜。ええなぁ。」と嬉しそうに懐かしんでいた。当時、5、6歳だった息子は「sweet sue」という曲が気に入ったらしく、その曲ばかりを延々とリピート再生させて大人たちをヘキエキさせていた(笑)。映画がヒットしたこともあり、チャボロ・シュミットの来日公演があったので、義父にプレゼントしたこともあった。ジャンゴを聴くと、今は亡き義父の笑顔や懐かしい声が曲間に顔を出す…。
 
 ジャンゴは、ジャズ・ヴァイオリニストの巨匠、ステファン・グラッペリと組んで、多くの演奏活動を行っていたので、今回のライブでは、ジャンゴ役のストーケロ・ローゼンバーグ(ギター)とグラッペリ役のティム・クリップハウス(ヴァイオリン)で名曲の数々を再現するという趣向になっていた。ストーケロは代々音楽家の名門ジプシーの生まれで、マヌーシュ・スウィングの第一人者とも言われているらしい。ジャンゴやチャボロ・シュミットが派手な伊達男だったのに対し、わりと紳士的な雰囲気をまとっていた。クリップハウスは、見た目もどこかグラッペリ似の陽気なオランダ人だった。他のメンバーは、モーゼス・ローゼンバーグ(リズム&リード・ギター)と急遽変更になったジョエル・ロッシャー(ダブルベース)。すぐにジャンゴとわかる独特の音楽世界を、一糸乱れず再現して、本当に素晴らしかった。一体どれだけ練習したら、あんな風に弾けるのだろうと驚くほかない。

 途中、山中千尋というジャズ・ピアニストがゲスト出演した。超ミニの真っ赤なドレスが目に眩しい。ピアノのペダルにやっと足が届くというくらい小柄だったが、その演奏は凄まじかった。「枯葉」など3曲ほどの短い出演でMCもなかったが、なかなかのインパクトだった。音楽的なことはよくわからないが、春の芽吹きのような勢いと荒々しさの中に優しさをくるんだようなちょっと風変わりなピアノだった。後で調べてみたら、活動の拠点はNYらしく、すでに国の内外で高く評価され、日本のジャズ・チャートでは全てのアルバムが1位になっている人気ピアニストだった。日本での演奏は「来日公演」になるようだが、またいつか、聴いてみたい気がした。