松任谷由実
コンサートツアー2011
Road Show
2011年4月15日
横須賀芸術劇場<立見 4R2>
 今年、生誕100年を迎えた岡本太郎とステージ上で歌い、踊っているユーミンが一瞬重なって見えてしまった。アレとコレの共通点を見つけるのがヒトならではの特徴だと養老孟司氏が言っていたが、似てるところ、同じところを見つけるのはちょっとした「あそび」になる。二人の共通点は、「多面体」であること。太郎さんは絵描きでありながら、様々なオブジェを造り、建築も手がけ、作家でもありタレントでもあり、プロはだしのピアノの腕前でもあった。日本人は職人を好む傾向があると何かの本で読んだことがあるが、そういうモノサシで計ると、岡本太郎は何者だということになり、事実、異端とも捉えられていた。しかし、一人の人間が好奇心の赴くまま多方面に手を伸ばし、人間の可能性を拡げていくのも面白いと思う。一つ一つの作品を鑑賞するのとは別に、それらを創り出した人間を総合的にみるのも興味深いことである。

 ユーミンのコンサート・チケットはなかなか取れない。毎年かなりの数の公演を行ってるにもかかわらずである。どこにそれほどの人気があるのかというのが個人的な興味だった。ふだんからユーミンは全く聴かないのだが、今回はチケットが当たったので、新作「ROAD SHOW」を買ってみた。20回ほど聴いたがそれほど好みではなかった、のだが…。

 ステージには凝ったセットが造られていた。新作に合わせて映画館の入口になっている。ステージ上のユーミンが入口から入っていくと、今度は映画の舞台セットがステージ上に現れるという仕掛けである。異国情緒あふれる町並み、広々とした海岸、満天の星空、SFの世界、それぞれの場面にぴったりな曲で構成され、そこにはたくさんのユーミンが衣装を替え、雰囲気も変えて登場した。「多面体」と感じたのは、そのせいである。

 アンコールを含めた全24曲のうち8曲が「ROAD SHOW」からの選曲だったが、CDで聴くのとは段違いによかった。様々なバリエーションのコスチュームに着替えながら、一生懸命、力強く歌うユーミンを見ていると、ふと幼稚園のお遊戯会を連想してしまった。いや、内容が稚拙という意味では毛頭なく、小さな子供が表現したいという純粋な衝動のままに舞台に上がり、大人たちの期待に応えようと精一杯身体を動かしながら歌い踊る姿と重なったのだ。大の大人のそれも音楽界の超ベテランが今も体当たりでやっているその姿にすっかり心を打たれてしまった。なぜ、ユーミンが長きにわたり、絶大な人気を保ち続けているのか、納得だった。確かにすばらしい。CDではわからない、音楽という範疇だけでは捉えきれない魅力がユーミンのライブをみて初めてわかった気がした。

 アンコールの前、ユーミンが今回の大震災について語った。「迷った。やるべきかどうか、とても迷った。でも、やってよかったと今日、思った。」この日一番の拍手に包まれた。実は、今日がツアー初日だったのである。ユーミンの感動が観客一人ひとりに共有された瞬間だったと思う。 凄い人である。情熱を爆発させ、走り続けている人。「爆発オジサン」といわれた太郎さんと、やはりどこか似ている。

 3曲のアンコールの後、会場の照明がつき、場内アナウンスが流れてもなお、拍手が鳴り止まなかった。しばらくすると、ユーミンがキーボード一人を連れて現れた。丁寧に感謝の言葉を述べるとともに、1曲、歌ってくれた。誰かが近くですすり泣いていた。そういう感動を与える人である。真のリーダーとはこういう人を指すのであろう。百聞は一見にしかず。本当に来てよかった…。