
昨年から始まったくるり結成20周年記念ライブ「NOW AND THEN」は今年になっても続いている。一体何回やるつもりか知らないが(笑)、とりあえず毎回行っていて、見事一度もハズレはない。前回までは1stアルバムから収録曲順に演奏するスタイルだったが、今回は、オーケストラとのコラボレーションで「NOW AND 弦」というわけである。岸田繁は元々クラシック好きで、現在は、オーケストラのスコアをかいているらしい。7thアルバム「ワルツを踊れ」でウィーンのオーケストラと録音していた経緯もあり、今企画もその縁で実現したものである。
2009年にリリースされた彼らのカバー集「くるり鶏びゅ~と」を聴いたときに改めてわかったことは、メロディーラインの美しさと岸田のボーカルセンスのよさだった。たまに変な楽曲も敢えてあるのだが(笑)、しかし、いい曲が多い。今回の選曲は当然ながら、オーケストラ向きのものが集められたのだと思うが、「WORLD'S
END SUPERNOVA」や「かんがえがあるカンガルー」のように一見合わなさそうなものが意外にしっくりくるのも新発見だった。今回のライブでいつもの彼らと違っている点が少なくとも2点あった。1つは、MCが極端に少なく、恒例の物販コーナーがなかったこと。もう1つは、アンコール用の曲がなかったこと。これについての岸田と佐藤からのコメントは、プログラム曲の練習だけで相当に大変で、基本的にアンコールなしのつもりで考えられたセットリストだった、とのことだった。印象に残ったMCは、オケと一緒にやる醍醐味について岸田が語っていた例えが、「コンニャクっていう歌詞があったとして、そこにいろいろな音色がたくさんついてくる楽しさみたいな」というようなことだった。この感覚は、おそらくやってみないと本当のところはわからないだろうけど、何となく納得である。
人生における幸せは、自分が本当にやりたいことができていること、そして、そのことが社会的にも評価されている(喜ばれれている)こと、というようなことをだいぶ前に本で読んだことがあるが、以来、時々、思い出す。求める程度にもよるだろうが、そう簡単なことではない。少なくとも、前者が先になければ、といつも思う。逆をやると、むしろ不幸になる危険があると個人的には警戒している。そういう観点でみると、くるりは実に幸せなバンドだと思わずにはいられない。彼らはもちろん苦労しながらではあるが、自分らの好きな音楽を20年もの間追究しつづけてきて、非常に多くのファンに喜ばれ、たくさんのミュージシャンにリスペクトされ続けてきた。才能と努力の賜であることを、彼らがメジャーデビューしてからの約18年間ずっと見てきたからこそわかる。若い彼らに敬意を感じ、羨ましく思っている。
今年4月に職場が変わってから、時々「蜘蛛の糸」について考えている。地獄に落ちた主人公カンダタが、生前にひとつだけ善い行いをしていて、それが蜘蛛を助けたことだったことから、極楽浄土へとつながる蜘蛛の糸に救われそうになるのだが、細い糸を頼りに地獄から這い上がっていく途中、下から続いてぶら下がってきた他の者たちに対して彼が取った態度によって、自らの可能性を消してしまう寓話である。人は実にそうなりがちな生き物であると常に戒めておかなければということを、日々、考えさせられている。人間とは本当に奥深いもので、だからこそ、飽き性の自分でもなかなか飽きないのかな、と思っている。
Set List
01.Remember me(feat.Flip)
02.ジュビリー
03.everybody feels the same
04.chili pepper japones
05.ロックンロール・ハネムーン
06.ブルー・ラヴァー・ブルー)
07.デルタ
08.春風
09.ブレーメン
10.2034
11.ふたつの世界
12.かんがえがあるカンガルー
13.コンチネンタル
14.アナーキー・イン・ザ・ムジーク
15.WORLD'S END SUPERNOVA
16.さよなら春の日
17.琥珀色の街、上海蟹の朝
encore
18.ブレーメン
♪QURULI featuring Flip Phillip and Ambassade Orchester
~20th ANNIVERSARY 「NOW AND 弦」
Bunkamuraオーチャードホール
2016年9月20日(火)19:05-21:00/3階3列33番