くるりワンマンライブツアー2009
〜とろみを感じる生き方〜
鎌倉芸術館 2009/12/15
鎌倉芸術館の3F席。かなりステージは遠かったが、こぢんまりしたホールだったのと、非常に音響のよい造りだったので全く問題なしだった。くるりは今年6月、8枚目のアルバム「魂のゆくえ」をリリース。いつものことながら、はじめは「うん?」というちょっとした違和感があったが、繰り返し聴くうちに気に入って、かなり聴きこんだ。シングルの「さよならリグレット」や「愉快なピーナッツ」「三日月」のほか、はじめ変な歌だなと思っていたのが「つらいことばかり」。1番で「つらいことばかり」と歌い、2番で「つらいことばかりじゃない」と歌って、再び「つらいことばかり」に戻るのだが、最後に「つらかろうが」で終わる。今日のライブでも歌っていたが、とても感情がこもっていて、今の時代を反映してるようでもあり、最後の「つらかろうが」でグッときた。
開演は18時半過ぎ。現在のくるりは岸田繁(vo.gui.)と佐藤征史(b)の二人。サポートとして、世武裕子(p)とドラマーの4人編成だったが、1曲目の「愉快なピーナッツ」から分厚いサウンドに圧倒された。岸田のヴォーカルは以前にも増して太く、厚く、迫力が増していた。そして佐藤のベースも相変わらず気持ちいいリズムを刻んでいた。
サポートの二人がとてもよかった。ドラムは最初のメンバー森信行が4thアルバム「THE
WORLDS IS MINE」を最後に脱退したのち、クリストファー・マグワイアになり、そのあと脱退している。音楽へのこだわりゆえなのだろうが、今夜のドラマーもかなりいいように思えた。そして、ピアノ、キーボード担当の世武さんもよかった。「魂のゆくえ」にも参加していて、音作りにとても重要な役割を担っているように思っていたのだが、ライブではさらに大きな存在感が感じられた。くるりの音楽は岸田の声とギター、佐藤のベースともに骨太な音作りをしているように思うのだが、そこに女性が入るのも結構いいなと感じた。元々くるりの音楽には、岸田と佐藤のファルセットが独特の広がりをかもしてて好きなのだが、そこに女性ならではのキーボードやコーラスが加わると、まさに鬼に金棒という感じである。驚いたのは、「ワンダーフォーゲル」や「ばらの花」など原曲はコンピューターの打ち込みと思われる曲をオリジナルどおりに鍵盤を弾いていたことだった。プロなんだから当たり前なのかもしれないが、何だか神業をみるような感じで見入ってしまった。
くるりは今年、「くるり鶏びゅ〜と」というトリビュートアルバムもリリースし、結構売れているらしい。個人的にトリビュート盤というのは、結局原曲を超えられないことがわかるだけであまり好きではないのだが、今回はカバーしている面子の魅力に負けて、つい買ってしまった。何しろ奥田民生を筆頭に、曽我部恵一、矢野彰子、松任谷由実と豪華メンバーなんである!それなりの楽しみ方はあるのだろうが、自分の場合はやっぱり、原曲はすごいな〜ということを再認識するだけだった。単にオリジナルを聞き慣れているせいなのかもしれないが、意外にもくるりの演奏力の高さや岸田の歌の力を改めて知った気がした。ちょっとした発見だったのは、くるりの歌には女性ヴォーカルの方がしっくりきたことだった。木村カエラも二階堂和美も松任谷由実も世武裕子もなかなかよくって、逆に、男性ヴォーカルだと岸田に負けてるな〜としか思えなかった。確かに岸田のヴォーカルはライブでも歌詞がちゃんと聞き取れるし、案外こまやかに表現されているのだ。「Baby
I Love You」をカバーした矢野さんが、「くるりにはいい曲がたくさんありすぎます。ちょっと分けてもらいたいです。」とコメントしてたが、確かにそうである。不思議な曲もあったりしてあまり意識してなかったが、ライブを聴いててもすべての歌が非常に完成度が高く、ちょっと退屈というような歌がない。「え、あの曲やらないんだ?」という名曲をたくさん残して終わってしまう。この日も、「ロックンロール」とか「ハイウェイ」とか大好きなのだが、どちらもやらず、それでも十分に内容の濃いライブに仕上がっていた。
ラストナンバーは、いつもどおり「東京」だった。これは定番である。ここからくるりは始まったのだし、おそらく原点を忘れないようにということなのだろう。そのときそのときの「東京」が聴けてよいのだが、でも、今でもデビュー当時に聴いた「東京」の情熱的で、ひたむきで、死にものぐるいの歌声、演奏が耳に残っていて、あれはあのときにしか鳴らすことができない音だったんだなと思える。自分にとっても取り戻すことができない過去が思い出され、少しだけ寂しくなる。くるりのライブは毎回よくわからないツアータイトルがついてて、今回の「とろみを感じる生き方」も何だかよくわからないが、とにかく満喫した。やっぱ、くるりは好きなバンドであると再認識した夜だった。