「プロジェクトX リーダーたちの言葉」

 

著者:今井彰

 

 

 2000年3月、「富士山レーダー」の放送から始まったNHKの「プロジェクトX」は、20%を超える高視聴率をもって世に受け入れられた。バブル崩壊、超氷河期といわれる就職難、失業率は5%台を突破し、大手企業がつぶれる不景気の中、年間3万人を超える自殺者が出ている現代の日本にとって、この番組はひと筋の光となった。

 番組の仕掛け人、NHKチーフ・プロデューサー今井彰氏の講演会へ出かけたら、次のような話があった。

「日本人はいわれているように臆病でも発想が貧困でもないし、スゴイ人はどんなところにもいる。世界で初めて米国の厳しい環境基準をクリアしたホンダのCVCCエンジンも、ホームビデオの世界規格となったビクターのVHSも、医療の革新的技術となった胃カメラも、みな無名の日本人がやったこと。こうした幾千幾万のプロジェクトが戦後の日本を支えてきたのであり、こうした独創性や技術力をもう一度思い出して、自信を取り戻してほしい。そんな思いがあってこの番組を作ろうと思った。」

 NHKではかつて、特定の企業名、商品名をニュース以外に使ったことがなかった。また、全く無名の日本人を登場させても視聴率は取れないというのが常識。さらに、1つの題材に対して3〜5ヶ月の取材が必要になるなど、この企画は当初から実現が危ぶまれていたという。果たして、放送が始まり、そして2回目の放送「窓際族が世界規格を作った−VHS・執念の逆転劇」の番組終了後、NHKに電話が鳴りはじめた。他のメーカー関係者からのクレームもあるだろうと予想していたが、蓋を開けてみれば2日間で5000件もの電話の向こう側には、たくさんのボロボロになったサラリーマンたちがいたという。「励まされた」「明日からまた頑張ってみる」そんな感動の声を聞いて、「これでいける!」と確信したという。今井氏の話から、紆余曲折を乗り越えながら誕生したこの番組製作そのものがプロジェクトXだったように思えた。

 この本は、番組の中から18本のプロジェクトを選び、今まで知られずにいたリーダーの人物像、エピソード、生の言葉を紹介している。日本人はこうも生きられるんだと、「働くおじさん」たちはきっと励まされるに違いない。

 

 

(文藝春秋)