2013年11月18日(月)、ポール・マッカートニー、実に11年ぶりの来日公演である。5月、ブラジルに始まった「アウト・ゼア・ツアー」は32公演にも及ぶ。71歳で、スゴイではないか!アメリカ、ポーランド、イタリア、オーストリア、カナダと世界を巡って、いよいよ日本の6公演で終わる。ビートルズのメンバーのうち2人はすでに他界しているし、ビートルズ・ナンバーをポールの声で聴く機会など滅多にあるものではない。実のところ、それほどビートルズ・フリークというわけではないのだが、世界中を熱狂させ、僕らが聴いている数多くのミュージシャンらに計り知れない影響を及ぼし続けている唯一無二の音楽をぜひ一度、生で聴きたいと思った。チケット代はふつうの2〜3倍と高額で少々たじろいだけれど…。

 19時10分、「Eight days a week」で幕を開けると、たちまち魅了されてしまった。ポールが弾いているのは、63年もののへフナ−・バイオリン・ベース。左利きのポール用に作られた特注品である。やはり、楽曲がすばらしい。バンド編成は意外と小さい。エイブ(d)、ブライアン(g)、ラスティ(g)、ウィックス(key)は、もう10年以上変わってないらしく、息の合った演奏はとても迫力があった。ポールは日本語も交えながらとても気さくに日本のファンに語りかけ、英語のMCはステージ横の巨大モニターに同時翻訳が表示されるようにもなっていた。こんなに配慮の行き届いたライブは初めてだった。バックスクリーンには曲に合わせて様々な映像が上映され、ムービングライトやレーザー光線、花火なども多用され、想像以上に派手な演出だった。1つ演奏が終わる度に、軽々と片手でギターを持ち上げたり、おどけて見せたり、とても71歳の老人には見えない。声も若々しいし、ベース、ギター、ピアノと次々と楽器を変えながら、一時も休むことなく、歌い続けた。ビートルズ・メンバーの中では最も声が高かったらしいが、キーは当時のまま歌われたようだ。やや声がかすれたりということもあったが、「Back in the U.S.S.R」や「Helter skelter」のようなハードな曲では激しくシャウトしていた。ジョン・レノンが凶弾に倒れたときに作った「Here today」をギター弾き語りで歌ったり、ジョージ・ハリソンの代表作「Something」をカバーしたり、死別した最初の奥さんリンダへの想いを込めたウィングズ時代の名曲「Maybe I'm amazed」など追悼的なナンバーがあったり、東日本大震災の被害者へは「Yesterday」が歌われた。「一体何曲歌ってくれるんだろう?」次々と歌い続けるポールは度々、「もっと聴きたいですか?」と日本語で聴衆に語りかけた。盛りあがる観客に応えて、演奏は延々と続いた。

 以前何かに書いたことがあるが、僕が初めてビートルズを意識したのは、中学校の放課後終了時に流れる「The long and winding road」だった。この美しいメロディを通算、何百回聴いたことだろう。この夜、作者本人が歌うのを聴いて、自然と涙があふれてきた。感慨深いとはこのことだ。当時のありとあらゆる感情の一切合切がこの歌に凝縮されているようで、嬉しさと感謝感激で一杯になった。高校時代にビートルズを聴きかじっていたこともあって、音楽の授業で友人らと選んだ課題曲が「Let it be」だった。必死で覚えた歌詞が懐かしく蘇ってきた。「Eleanor rigby」やジョンの書いた「Being for the benefit of my Kite!」やU2もカバーしていた「Helter skelter」などなど大好きな歌も多く、今聴いても全く古びてなかった。実に格好良かったし、音楽の幅の広さに改めて驚嘆してしまった。

 アンコールになってからも8曲歌ってくれた。ニュー・アルバム「NEW」からの4曲を含む全39曲。ビートルズ・ナンバーが3分の2ほどあったので知っている歌が多く、存分に楽しめた。音楽評論家の萩原健太氏が書いていたが、「一連のライブ活動でポールが観客に高らかに提示し続けているのはポール・マッカートニーという一人の人間の現在ではなく、彼が50余年の歩みの中で生み出してきた楽曲そのものの現在なのだ。前人未踏のキャリアの威光に寄りかかることなく、頑固に、真摯に一音楽家であり続けようとするポールの心意気。改めて圧倒されるしかない。」に僕も同感だった。本当に圧倒され、感動した。いまだにビートルズの域に達したバンドは1つもないだろうと思えた。明らかに群を抜いている。それと、ポールの並々ならぬサービス精神にも感銘を受けた。ポールがインタビューに答えて、次のように語っている。「多くの人が頑張って稼いだお金をたくさん払って観にきてくれる訳だから、客が一生忘れないようなコンサートにしたいと思っているよ。」と。71歳になってもそういう気持ちを持ち続けて実践しているなんて、本当に素敵なことだと思う。2時間半を超えるコンサートを目の当たりにして、なぜ世界中がビートルズに熱狂したのか納得できた。この夜のことは、きっと一生忘れないであろう。


ビートルズのファンサイトにセットリストがあったので、引用して掲載する。
1.Eight Days A week
2.Save US
3.All My Loving
4.Listen To What The Man Said
5.Let Me Roll It
6.Paperback Writer
7.My Valentine
8.Nineteen Hundred And Eighty Five
9.The Lomg And Winding Road
10.Maybe I'm Amazed
11.I've Just Seen A Face
12.We Can Work It Out
13.Another Day
14.And I Love Her
15.Blackbird
16.Here Today
17.New
18.Queenie Eye
19.Lady Madonna
20.All Together Now
21.Lovely Rita
22.Everybody Out There
23.Eleanor Rigby
24.Being For The Benefit Of Mr,.Kite!
25.Something
26.Ob-La-Di,Ob-La-Da
27.Band On The Run
28.Back In The U.S.S.R.
29.Let It Be
30.Live And Let Die
31.Hey Jude

Encore1
32.Day Tripper
33.Hi Hi Hi
34.Get Back

Encore2
35.Yesterday
36.Helter Skel;ter
37.Golden Slumber
38.Carry That Weight
39.The End

2階1塁側22列150番