赤坂BLITZ
 10周年ライブを10が3つ並ぶ2010年10月10日に行うと1年前から決めていたそうだ。その頃はまだパリスマッチをよく知らなかった僕は、年明け早々、なんとなくAmazonで買ったベスト盤を聴いてファンになり、4月のビルボード・ライブですっかり魅了されてしまった。一目惚れみたいなものだから、「何がいいんだろう?」っていうのは後であれこれ考えてわかることではある。ふと思い出すのは、ピチカート・ファイヴ。野宮真貴さんの天性の歌声に小西康陽さんの創るメロディ、グルーヴ、詞の世界がマッチしていて、そのセンスが好みに合ってて、他に代わりが考えられない唯一無二のバンド。パリスマッチが杉山洋介さんの作曲、アレンジを美声のミズノマリさんが歌っているのと似た構図である。ジャズやボサノバ、クラブミュージック、ソウルなどが融合した音楽世界は、音色も音数も多く、音のシャワーを浴びているようで心地いい。
 4月に行ったビルボード・ライブは食事付き2ステージという場所柄、時間的な制約があったが、今回は音楽だけのフルコース・ライブで、2時間半、アンコール2回という大サービスぶりだった。10月10日に何とか間に合わせたという9thアルバム「to the nines」が4日前に発売され、その中からもたくさんの新曲が演奏されたし、代表曲も多かった。構成も凝っていて、オフィシャルサイトで事前投票があった「ライブでやってほしい歌」のベスト3を演奏したり、アコースティック・コーナーがあったり、恒例らしいミズノマリさんのピアノ弾き語りコーナーがあった。一番緊張するというこの弾き語り(確か「東京ベイ」)もとてもよかった。今回も出演者は多く、ゲストギターの松原氏を含めて総勢12名だった。ちなみに客層は30代を中心に、男女比が3対7という感じだろうか。若い人と年配者が少なく、もう若くはないが、まだ中年というには少し早いぞという特定の年齢層に支持されているようだった。自分もそんな一人なのだろう。会場は広めのライブハウスであるが、1階フロアにはイスが並べられ、結局、立ち上がる人は皆無だった。比較的大人しい人々がパリスマッチのファンなのだろう。最後くらい立ち上がりたい気分だったんだけどなぁ…。パリスマッチは、ジャズやラテンをスタイリッシュにアレンジした音楽ではあるが、ふとした瞬間に演歌を感じて「何で??」と自分で可笑しいときがある。ミズノマリさんがもっている「何か」ではないかと思うのだが、よくわからなくて面白いところである。
 大抵、ライブに行くのはオフの日だから、仕事を離れて別のことを考えてることが多い。この日は、現代日本を表すキーワードは何だろうか?と考えてみた。頭に浮かんだ順に、「就職難」「グローバリゼーション」「エコ」「リーマンショック」「引きこもり」「少子高齢化」「ネット社会」「オーガニック」「二極化」「リストラ」「政治不信」。きっと、その人の性格やおかれている状況によって選ぶ言葉は違うだろうけど、こうして10個並べてみると我ながら明るい言葉が少ない。10年前に比べて閉塞感を強く感じるようになったし、20年前に比べたらかなり楽観的ではなくなった。それでも時間は、何の容赦もなく過ぎていってしまう。ちょっと待ってよと思うのだが…。
 「花を愛するのに植物学は不要である」という言葉があるそうだ。含蓄を感じる言葉である。「植物学」の恩恵を受けすぎた現代人は、ただありのままに純粋に「花を愛すること」を忘れてしまったのかもしれない、とパリスマッチ・ライブの余韻に浸りつつ、考えていた。