

近頃では、ワーカホリックとさえ云われているらしい。ソロ転向時は「休みが必要だ〜♪」と歌い、インタビューでも度々休みと釣りの必要性を熱く語っていたものだが、これまでの活動をみてるとどう割り引いても人の3倍は働いている。ソニーミュージックの顧問にもなってるようで、やっぱ、すごい働き者である。ツアータイトルが「おとしのレイら」なのは、小原礼さんの還暦にちなんだものだが、歳を気にしつつ、案外それを楽しんでもいるのだろう。相変わらずチケット入手が困難だったが、なんとか取れた大宮ソニックシティまで行ってきた。
この日は午後休みを取れたので、「Mr.ビーン」のローワン・ワトキンソン主演の新作「ジョニー・イングリッシュ/気休めの報酬」を先にみた。タイトルは「007/慰めの報酬」(08)からの引用で、「いとしのレイラ」をもじった「おとしのレイら」と何となくかぶっていると一人で納得していた。それはさておき、映画が予想以上に面白かったので、ゆっくり茶店でプログラムを読んだり覚書をメモったりしているうちにスッカリ時間超過…。大宮は思ったより遠く、駅到着が開演時刻を過ぎてしまった。雨降る中、駅から走って会場に駆け込むと、ちょうど「ギブミークッキー」が爆音とともに始まっていて、総立ちの会場はすでに凄い熱気に包まれていた。
2曲目が「ルート2」、そして「わかります」と好みの選曲が続いた。ベースの小原礼さんが還暦を迎えたといので、MCはもっぱら還暦トーク。これが本当につまらない話ばかりなのだが、なぜか会場は沸く!だらだらと無意味な会話を民生と礼さんがやるのだが、しかし、これがないと困るのも奇妙な事実。歌を聴くためだけに来たんじゃなく、何かおしゃべりを聞きたいというのがファン心理なのだ。そのだらだらトークの中に何度も「死」が出てくるので気になって仕方なかった。他のミュージシャンと違って、民生が直接的に3.11の話題に触れることはないのだが、無意識的に意識してるんだろうなと思える。そういう人だと思う。礼さんの還暦お祝いってことで、礼さんのいたサディスティックミカ・バンドの曲とプレスリーの「監獄ロック」の替え歌「還暦ロック」を礼さんのボーカルでやった。異常なほど、盛り上がった。
以前から、民生と立川談志の風貌にどこか似たものを感じていたが、その立川氏も昨年11月、亡くなった。亡くなると本屋にたくさん著作が並ぶので、「人生、成り行き〜談志一代記〜」というのを買ったのだが、この日、読んだところに肉体の衰えについての話があった。「頭脳が肉体に苛立っているというのが、いまのあたしの状態です」と。で、偶然にも民生もMCの中で、体力の衰えと技術について話していて、不思議な符合を感じた。「体力的なピークがちょうどおととい来た!移動日に来てしまったが、これはどうにもならない」みたいな話で可笑しかった。立川氏も民生もいろんなことを考えてる人で、それが少し一般論とズレていながら、核心を掴んでいるようで思わず聞き耳を立ててしまう。頭のいい人、信念のある人って、興味深い。
前半に「人間」を歌った。いつも歌うな〜と思う。「人間は 死ぬまで どれだけ 自分のこと 他人のこと 覚えていれるでしょう♪」という詞は、「人の息子」では、「せっかくの人生だ 死ぬまで生きれる♪」という表現で繰り返される。短い言葉の中に、共感するものがあるなぁといつも思う。途中、陽水さんの「最後のニュース」を歌った。民生のは声を振り絞るような熱いニュースだ!自分はこれを先に聴いたから、後から原曲を聴いたときは物足りなく感じた。ところが、陽水さんのライブで聴いたら、やはり迫力の違いを感じてしまった。さらっと朗々と歌う陽水さんの声の中に、深い虚しさや哀しさを感じて、いてもたってもいられないような終末感に襲われそうになった。民生のを聴いて、また陽水さんのライブで「最後のニュース」を聴きたくなった。
終盤はいつものようにノリのよい歌で畳みかけた。順番は忘れたが、「愛のボート」「御免ライダー」「明日はどうだ」「何と言う」などなど。洪水のような音のシャワーに続くアンコールで新曲「拳を天につき上げろ」、そして「解体ショー」で見事に締めくくった。照明がつき、場内アナウンスが流れたのだが、この日のお客さんは帰ろうとしない。鳴り止まぬ拍手のあと、メンバーが再登場し、「さすらい」を歌ってくれた。まあ、この歌で終わるというのがいつもパターンだったから、予定されていたのかもしれないが、観客は得した気分で帰路につけただろう。外は、いつのまにやら白銀の世界。「雪の降る街」も聴きたかったな〜などと思いながら、雪道を踏みしめた。