♪オリジナル・ラブ
“Bless You!” Tour
関内ホール
2019年6月8日(土)18:05-20:20/1階23列22番

 「絆のはなし」という本を読んでいる。著者は、伊坂幸太郎と斉藤和義になっているが、二人の対談である。数日前、斉藤和義のCDを自宅で聴いていて、ふと「ベリー・ベリー・ストロング~アイネクライネ~」が自分の中に入ってきた。いつもはどちらかというと聞き流している歌だったが、このときは不思議なくらい迫ってきた。アンケート調査に協力してくれた女の子の手にマジックで書かれた「シャンプー」の文字。それを見て何気なくつぶやく「シャンプー」。「今日、安いんですよ。忘れないように」と小さな声でいう彼女。その姿可笑しくてと歌うシークエンスに、なぜか心を掴まれてしまった。で、調べてみたら、この歌は伊坂幸太郎が斉藤和義のために書き下ろした「アイネクライネ」という小説を原案にして、斉藤和義がかいた歌だった。そもそも伊坂幸太郎が作家になったのは、会社へ行く途中に聴いた斉藤和義の「幸福な朝食、退屈な夕食」がキッカケだ。それも、何度も聴いていた歌だったのに、そのときはすごく入ってきて、その日のうちに奥さんに相談して会社を辞める決心をしたのだ。僕が斉藤和義ファンになるキッカケも同じ「幸福な朝食、退屈な夕食」だったのだが、それはともかく、自分の中に入ってくる瞬間というものが稀にあり、人の生活や人生をも変えてしまうことがある、と僕も信じている。そのやりとりが書かれているのが、冒頭の「絆のはなし」という本である。オリジナル・ラブと全く関係ないことを書いているが、ここ数年、オリジナル・ラブの歌が自分の中に入ってこなかったのだ。ラジオの周波数が合ってないような感じ。だからといって、無理して聴いたりはしないのだが。
 今年2月、4年ぶり18枚名のアルバム「Bless You!」がリリースされた。そのツアー初日だった。どうしても初期の「結晶」や「EYES」、「風の歌を聴け」を期待してしまうと、どんどん遠くへ離れていってしまった感があるが、しかし、新作の仕上がりは悪くない。たまには行ってみるかなって感じ。3年ぶりである。1曲目が「ミリオン・シークレット・オブ・ジャズ」だったか?なかなかいい出だし!しかし、MCがない。田島さんはかなりシャイで、饒舌なタイプではない。照れくさそうに話すが、それをみんなは楽しみにしているとも思うのだが、今回のライブは徹底的にMCがなかった。ただ、音楽のノリはよかったし、選曲もよかったから楽しめた。「灼熱」や「DEEP FRENCH KISS」や「ROVER」などの古い曲と新譜からの曲が適度に混ざっていて、とても聴き応えがあった。新曲もライブで聴くと、さらに格好よかった。唯一のMCというと、タイトル曲の「Bless You!」は、自分の力だけでなく、何か他の大きな力がなくては生まれない曲、というような紹介だった。CDで聴いてるときはそこまで思わなかったが、そう言われて聴くと、そういう風にも思えた。
 「アイネクライネ」も買ったが、まだ、読んでない。ただ、対談からわかるのは、日常的な小さな出会いが描かれているだけのようだ。シャンプーのエピソードも伊坂さんが執筆中に行ったスターバックスの店員さんの手に書かれていたことがネタになっている。そんな日常ゆえのリアルを書きつつ、そこで起こりうるミラクルを描けるのが伊坂幸太郎という作家の魅力だろう。はて、オジリナル・ラブと自分との出会いは何だったかと思い出してみる。それは、1枚のアルバムだった。ほとんど名前くらいしか知らなかったオリジナル・ラブの「SUNNY SIDE OF ORIGINAL LOVE」という初期のベスト盤を中古CDショップで見つけて、たぶん少しだけ視聴して「冒険」で買ったような気がする。その頃は、そういう衝動的な冒険を度々していて、ハズレもたくさんあったのだが、その一部が四半世紀くらいのつきあいになっている。そういうのも絆のはなしかな、と思わないではない。