LISA ONO
concert tour 2009
Jazz Standards
orchard hall 20090725
渋谷という街の猥雑とした雰囲気が昔からあまり好きではない。益して、自分が歳をとればとるほど、この若者の街が自分から遠くなり、さらに場違いに思えてならないのだが、映画館やライブハウスが多いので、ついついよく行っている。そんな中、Bunkamuraのオーチャード・ホールは別格であり、格別だ。「今日の会場はオーチャード・ホールだ」と思うだけで、朝から落ち着いていられる。ここで聴く小野リサは一味違う、といつも思う。場がもつ雰囲気のせいか、より洗練され洒落た感じがする。小野リサ+オーチャード・ホールは見逃せない。そして、毎回、期待を裏切らない。
今回は、3月に出たジャズ・スタンダードのアルバムがベースとなったツアーである。ブラジル録音とL.A録音の2枚に別れていて、選曲も違うし、どことなくテーストも違っているので、その時々の気分によって選んで聴いている。とはいえ、あまり聴き込んでなかったのだが、スタンダードなので曲名は知らなくても何となく知ってる曲が多い。
ライブは2部構成になっていて、1部がこれまでの色々なアルバムからセレクトされたベスト・ライブ的な内容だった。その1曲目が意外にも「いっそセレナーデ」。予期せぬ嬉しいサプライズだったが、会場に井上陽水さんが来ているというので、急遽、歌ったのだそうだ。それにしては、歌詞も覚えていたし、2番はポルトガル語で歌っていたし、たびたび歌ってるのだろうか…?ボサノヴァの産みの親の一人、A・カルロス・ジョビンの歌もたくさんあったし、チャップリンの「スマイル」もあったりと、とても密度の濃い内容だった。第2部は、今回のジャズ・アルバムからの選曲で、はじめはNYのとあるバーという設定。ピアノ伴奏だけで始まり、1曲ごとに楽器が加わって、徐々に盛り上がるという志向がなかなかよかった。
小野リサさんの気だるいオーラは、ボサノヴァによく似合う。ブラジルにはサンバもあるが、やはり小野リサにはボサノヴァがいい。そして、ボサノヴァ風にアレンジされたジャズもとても似合っている。最後はジャズナンバーではないが、「ペーパームーン」だった。アンコールで再びステージに現れると、「いや〜、楽しくてやめられません」と言って微笑んでいた。「今日、歌い、演奏した歌は、ずっとこれからも歌われる名曲ばかり。音楽をやっていて本当によかったと思います。」というような挨拶があった。幸せな人だなって思うし、その幸せを他の人にも分けてくれる人だな〜と思った。肩の力を抜いて、リラックスしながら、濃密な時間を創
り出していく力量は、本当にすごいと思う。
前々から「大人な女性」だなと思っていたが、さらに磨きがかかってきた感がある。歳をとることはマイナスなんかではない、そう思わせてくれるのはとってもすばらしいことだと思う。アンコール曲は、グレンミラーの「ムーンライト・セレナーデ」とフレッド・アステア主演の映画でも使われた「Look to the rainbow」だった。美しい旋律が心の中を通り抜けていくような感覚に身をゆだねながら、ずっとこのままでいられたらという気がした。しかし、必ず終わりがきてしまう。何かが終わってもまた次がある、とは限らない。そう思って、この「今」を味わい尽くそうと思う。でも、きっとまた新しい朝がくる、そう思いながら眠ろうと思う。今日の日よ、おやすみなさい。