今年の梅雨明けは例年より1週間も遅れた。夏が始まったばかりの茅ヶ崎は、雨上がりの湿気を含んだ暑さでべたべただった。沖縄へは、本島へ一度、石垣島~竹富島~由布島~西表島と島巡りで一度行ったことがあるが、あの地の暑さと海と空の青さと、まだ幼い息子の姿が思い出される。沖縄というと、一番先に思い浮かぶのは宮沢さんの「島唄」と「ひめゆりの塔」だろうか。「島唄」自体がひめゆり学徒隊の生存者に聞いてもらいたい想いで作られた歌なので、この2つは1つといっていいのかもしれない。美しい海、のどかな地が悲惨な戦争の記憶とつながっているが故に、強い印象を残してしまうのかもしれない。
 会場の茅ヶ崎市民文化会館は、茅ヶ崎駅からサザンビーチと反対に歩いて5分少々。ローカル色溢れ、地元市民でにぎわっている風だった。観客の大半は60代以上だろうか。沖縄出身者も多かったようだ。2部構成の前半は、宜保和也、仲宗根創、うないぐみ。15分の休憩を挟んで、後半が古謝美佐子、夏川りみで、3時間はあっという間だった。うないぐみのことは全く知らなかったが、初代ネーネーズの3名(古謝美佐子、宮里奈美子、比屋根幸乃)に島袋恵美を加えた4人グループで2012年頃結成されたようだ。ちなみにネーネーズの方は何度も活動停止とメンバー交代を繰り返してきて、2015年から新メンバーで活動中らしい。うないぐみの歌も知らなかったが、「テーゲー」などネーネーズ初期の代表曲3曲をメドレーで歌ってくれたので懐かしかった。
 宜保和也は、石垣島出身。石垣は、ビギンや夏川りみを輩出した「唄の島」である。民謡に限らずポップスやロック色の強いオリジナル作品を中心に、若者らしいパワフルなステージだった。仲宗根創は沖縄民謡なので地味ではあったが、しゃべりが面白かったのと、三線とウクレレを合わせたという「サンレレ」という楽器を使ったハワイアン風のオリジナルがよかった。しかし、何といっても華は夏川りみだろう。声に可愛げと凛とした美しさがあり、どんな歌だろうと魅了されてしまう。彼女の代表曲はいまだに「涙そうそう」といっていいだろう。ビギンのカバーでありながら、すっかり彼女の持ち歌である。序盤、うないぐみと歌った「芭蕉布」や古謝美佐子と歌った「童神」がよかった。「芭蕉布」を初めて聴いたのは、ブームのアルバム「世界でいちばん美しい島」に収録されていたものだった。宮沢さんのライブでも歌われていたので、すっかり彼のオリジナルかと思っていたが、昭和40年発表の沖縄民謡であった。一方の「童神」は、birdのカバーで聴いていたのだが、原曲は、作詞/古謝美佐子、作曲/佐原一哉である。ネーネーズ脱退後の古謝さんの代表曲といっていいだろう。「島唄」以降だろうと思うが、沖縄音階を取り入れた音楽を耳にする機会が増えて、個人的にはやや食傷気味であるが、本物の名曲はやはりいいものである。ステージには、度々、エイサー太鼓の琉神が登場し、場を盛り上げていた。今や世界ツアーを行うほどの人気だという。最後は出演者総勢が集まり、観客総立ちでカチャーシーで盛り上がってお開きとなった。個人的には、カチャーシーよりサンバよりベリーダンスより阿波踊りの方が好みではあるが…。
 以下、ライブ後の独り言。月が変わり、8月5日~21日までリオ・オリンピックが開催された。ジカ熱を恐れて出場を見送る選手がいたり、直前にロシアのドーピング問題が発生したり、頻発するテロも心配されていたが、どうにかこうにか盛況に終わったようだ。今回、オリンピックをテレビ観戦しながら生まれて初めて思ったことは、これらの競技が子供の競争と根っこでつながっている感じがしたことだった。「よし、そこまで駆けっこだ!」と向こうの樹まで走り出したり、いきなり取っ組み合って、相撲ともレスリングともつかない力試しをしたりする子供らの衝動が数々の競技になっているような気がして、可笑しがっていた。たぶん、そう思う必要もあったのだと思う。近頃、世の中が面倒くさくなっている気がする。24時間体制でチェックされ、他人の過ちに対して手厳しい。許容レベルを下げておかないと危ないと感じているからだろう。まるで「1984」の世界のように、互いが監視し合い、妙な圧力がお互いを息苦しくしていて、その反動が極端な場合には、猟奇的な犯罪にまでエスカレートしてしまうように思える。何が不寛容さを生んでいるのか、否、もっと厳格であれと思っている人の方が多いのか、よくわからない。世界に目を向ければ、テロや領海侵犯やらで緊張感が高まっており、より強い対応が必要という風潮もある。世界と社会と個人は互いにリンクし、日々の生活にも影響しているのだろうが、グローバルすぎて、複雑系すぎて、自覚するのはかなり難しい。だったらもっとシンプルに、本質的な部分を考えなきゃと感じている。論理は飛躍するが、いつも感覚の方が先にあって、そう感じた理由は後からじんわりわかってくる。先の戦争のこともそれと似ている。どのように始まって、どのような世論が形成され、人々の受け止め方はどのように変遷し、そして今、当時のことがどう認識されているのか。沖縄は戦争を思い出させる。今を知るために、過去を知らねばと思う。


♪沖縄音楽フェスティバル
茅ヶ崎市民文化会館
2016年7月31日(日)17:00-20:15/1F22列28番