
会場に白い面をした男が現れ、蚊を捕まえるような仕草をしながらステージまでいく。パントマイムのような踊りのあと緞帳が上がり、ノリのいい「GLAMOROUS
SKY」で幕が明けた。続いて「一色」、「雪の華」へと畳みかける。「雪の華」は僕が中島美嘉ファンになるきっかけになった曲なので、この美しい名曲を早々に歌ってしまうのは勿体ないなぁといつも思うのだが、他にも名曲はたくさんあるからいいんだと思い直すのもいつものことである。MCはこの日も短めだった。「話すのは苦手」とよく言っている。話好きだけど苦手なのか、そもそも話をすることが嫌いなのか、実は上手だけど苦手と思っているだけなのか…、鶏と卵論争になるのでやめておこう(笑)。
今回のツアーは中国公演から始まった関係で、間をつなぐために衣装替えを多くしたと言っていた。衣装は7種類もあって、衣装替えのたびに選曲の雰囲気が変わっていく趣向だった。前菜、スープ、メインディッシュ、デザート、コーヒー…というフルコースでいくわけだ。しっとりとしたバラードからノリのいいロックまでいろいろな料理が楽しめて、改めてバラエティに富んだ楽曲に恵まれたシンガーだと思えた。「僕が死のうと思ったのは」はほろ苦く感動的な味だったし、「恋をする」は今までにないくらい可愛らしくスイーツの味わいだった。初めてライブを聴いたときは、耳の病気の関係で音程のズレがとても気になったが、この日は、全く問題なかったと思う。体調によって聞こえ方が違うと話していたこともあるので、今日は調子がよかったのかもしれない。
アンコール後のMCで、「ファン限定100人規模のプレミアムライブというのをやっていて、音楽を通じて大人が泣ける場をつくるのが自分の使命だと確信した」と語っていた。彼女は時折涙をみせつつ、そのときはとても饒舌で、決して話下手ではなかった!(笑)。アンコールの最後にHYDEプロデュースの新曲発表があった。サプライズの初披露だったようで、ファンの熱気も最高潮に達した。これで終わるかと思いきやさらに続きがあって、リードギターの土屋公平さんと一緒に活動している「MIKA
RANMARU」というバンドでやっている音楽をやってくれることになった。マドンナのような露出の多い格好に着替えてハードロックを歌う姿はとても楽しげだった。バラードシンガーの印象が強いが、結構、ハードロックも似合う。そう、映画「NANA」を観ればわかるけど…。最後にメンバー全員がステージ前方に並び、中島美嘉がマイクなしで「ありがとうございました」と叫んで終わった。フルコースと銘打ったツアーらしく、盛りだくさんの充実した内容だった。
この日は、久しぶりに読書ができた。「なぜ『小三治』の落語は面白いか?」という本に、「落語は客を笑わせるものではない。客に語りかけるのはマクラだけでいい。中に出てくる人同士が会話をしなくてはいけない。」という話が出てきて、ふ~ん、そういうものかと興味を掻き立てられた。以前、ドキュメンタリー映画「小三治」を観たときも、落語という言葉だけの芸に強く感銘を受けたことがあったが、それは「男はつらいよ」で渥美清扮する寅さんが目くじら立ててまくしたてる様子にも通じるものがあって、そこに何があるかといえば、それは人間への深い愛おしさなんだろうなと思える。動物を飼っているとわかりやすいが、人間は遥かに面倒くさい生き物だとつくづく思う。だからこそ、落語も映画も音楽もずっと作られ、演じられてきたのだろう。やはり時々は、面倒くさがらずに美味しいものを食べに行かねばと思う。
Set List
1 GLAMOROUS SKY
2 一色
3 雪の華
4 Forget Me Not
5 メドレー
ALWAYS~ORION~初恋~WILL~愛してる~STARS
6 FIGHTER
7 TOUGH
8 I DON'T KNOW
9 BLOOD
10 LOVE IS ECSTASY
11 蜘蛛の糸
12 明日世界が終わるなら
13 声
14 僕が死のうと思ったのは
15 恋をする
16 ベストフレンド
17 A or B
18 メドレー
LIFE~Over Load~CANDY GIRL~TRUE EYES~CRESCENT MOON~ONE SURVIVE
19 ALL HANDS TOGETHER
20 花束
Anc.
21 メロディ
22 JOY
23 KISS OF DEATH
♪中島美嘉 FULL COURCE TOUR 2017 ~ YOU WON'T LOSE ~
Bunkamura オーチャードホール
2017年12月29日(金)18:45-21:45/2F R10-3