奥田民生 JAPAN TOUR MTR&Y 2010
神奈川県民ホール 2010年12月14日
 3階席というのでかなり後ろの席を覚悟していたら、1列目だったので、ステージを上から覗き込むような、なかなかな場所だった。客層は相変わらず若く、新たなファンが確実に増えているのがわかる。再結成されたユニコーン効果なのかもしれない。今年は「ひとりカンタビレ」があり、The Verbsがあり、それに続くソロである。「外人たちが日本でやりたいというのでソロ・ツアーは短めになってしまった」と言っていた(笑)。
 19時過ぎから21時頃までノンストップ。さらにアンコールでは、最前列のカップルをステージ中央のソファーに迎えてというサービスぶり。しかも2回目のアンコールもあって、「イージューライダー」で大いに盛りあがった!これで終わりだったのだが、会場に「さすらい」が流れたものだから、場内アナウンスは流れていたものの誰も帰ろうとせず、みんなフリ付きで歌いきってようやく終わった。年の瀬独特といおうか、ゆく年を名残惜しむかのような師走の雰囲気が、個人的にもしみじみいい感じだった。
 MTR&Yツアーは、たぶん2回目である。ドラマー湊さんのM、民生のT、ベース礼さんのR、キーボードゆーたさんのYなのだが、ソロ11年目にしてバンドメンバーが変わって、今の4名になったその年のツアーが今から5年前のMTR&Y05だった。そのときはギターが2人から1人になったことなどもあってかなり違和感があったが、今は、このバンド・サウンドにすっかり馴染んだ。
 たったひとりでステージに上がり、ドラム、ベース、ギター、キーボードなどなどを順番に演奏、録音し、最後に歌入れをしながら、1ステージで1曲ずつ作っていくという「ひとりカンタビレ」を今年の春に行い、8月には「OTRL」というCDになって発売された。これがなかなかよく、今回は、このアルバムをメインとしたツアーなのかと当然思っていたが、蓋を開けたら違っていた。わりと満遍なく、どっちかというと中期以降のしかもシングルに限らず、なかなか渋めの選曲だった。思い出すままに書けば、「花になる」「イオン」「月に吠えろ」「E」「サウンド・オブ・ミュージック」「恋のかけら」「いつもそう」「ハネムーン」、そしてニュー・アルバムからは「ひとりカンタビレのテーマ」「最強のこれから」「わかります」「音のない音」「たびゆけばあたる」「解体ショー」があったような。少々、記憶が薄れてきてる…。
 MCはいつもに比べて多かった!「僕は天才じゃないですよ。」という話から、「でも、自分がいいと思う部分が人と同じがいい。変人にはなりたくないから。でも、気に入ってもらおうという努力はしてこなかった。自分がやってることを偶然にも人がいいと思って欲しいと思ってやってきて。よくぞ買ってくれたな〜と、みなさんに感謝してますよ。そうやって25年やってきました(笑)。」で、拍手喝采になったわけだけど、民生の面白い話しぶりを言葉にしてもなかなか伝らないのだが、民生のこだわり方はよくわかる。「解体ショー」という自分のライブ活動をテーマにした新しい歌があるが、その歌詞のなかに次のようなフレーズがある。「終わってしまうよ 忘れちゃってくれ 忘れないでくれ 裸になってくれ」。真逆なことを同時に言ってて可笑しいのだけど、そこはそこ、偏りすぎない、絶妙なバランス感覚なのだと思う。民生のMCを聞いているといつも自分の仕事のやり方について考えてしまう。ステージ上での客の心の掴み方の巧さ、そして、演奏や歌の質の高さに改めてプロのレベルの高さを感じる。自分も何とかせねばといつも反省ばかりである…。
 今回、ドラムの音がずいぶんと違ってるように聞こえてよくよく見ていたら、フロアタムというのか、ドンドンかなり低音の出る太鼓が1つ多かったようだった。珍しいドラムセットを使ってるんだなと思っていたら、今回のソロ・ツアーでは、経費削減のためThe Verbsのものをそのまま使っているのだと言っていた。勿論、経費削減は冗談だろうけど。
 心の窓、ということについて、時々考えている。この窓が大きく開いている人は、友達が多いと思うのだ。多くの人が欲しいものが、順序はともかく、お金、健康、権力、名誉、そして友達なのかなと思う。多ければ多いほど自慢できるし、嬉しいものだから、みんな懸命になるし、そこに際限がなくなるという落とし穴もあるように感じる。民生はその辺のバランスもよい人だなと思うのだ。天才ではないと言ってたから、努力の人だと思う。しかし、相当の才能を感じるのも確かだ。やはり、改めて憧れの人である。