

♪宮沢和史 弾き語りツアー 寄り道2015 「連れづれなるままに…」
GUEST TRICERATOPS
渋谷公会堂
2015年8月1日(土)16:10-18:40 / 2階14列49番
昨年末、ブームの解散ライブが終わると、軽い喪失感があった。「風になりたい」や「ブランカ」や「からたち野道」がもう聴けなくなる。そう思うと、一抹の寂しさが胸の内に広がって、冬の街にこぼれて消えていった。本気で好きだったのだと別れてから気付く恋人たちのような、後戻りできない後悔に似た気分になった。しかしながら、当然のことながら、宮沢さんが音楽活動を辞めるわけではない。そんなはずがあるわけない!来年から、いよいよソロ・ツアーも始動するらしい。今回はその前哨戦というか、以前からソロ・ワークスとして続けてきた弾き語りライブである。
この日も宮沢さんは饒舌だった。場数を踏んでいる以上に、宮沢さんのMCは格段に上手くなっていると感じる。多くのミュージシャンにとって、ライブでのMCは負担だろうなと思う。1回限りならまだしも、ツアーであれば、何度も何度も同じような話をするわけだ。逆に毎回違う話でもいいわけだが、それはそれで大変だろう。宮沢さんは、久しぶりのライブで緊張しています、と何度か言っていた。そして、今日のためにいくつか話を準備してきましたとも言っていた。井上陽水さんだったら、たった今、思いついたかのような顔で話すところだが、宮沢さんは、そうはならない。陽水さんが演劇なら、宮沢さんは映画的だ。ブームの解散について、寂しさも後悔もなく、メンバー全員でやりきれたことに感謝できた、というようなことを言っていた。同じことを解散ライブでも話していた。自分の想いをストレートに伝える術をもっている人である。うまく話せないから音楽で表現するという人も少なくないと思うが、宮沢さんの場合は、音楽でも言葉でも強力な表現力をもっているように思う。途中で2回、ポエトリー・リーディングがあった。聴きながら、すごく共感したり、力が湧いてきたり、涙が出そうになったりした。そういうことはあまりないことだった。昔から、詩は、どういうわけか苦手なのだ。叙情詩より叙事詩が好き、漫画より活字の方が馴染みやすい、というのと理由は同じだろうと思う。詩は、活字で読むより、人の声で聴いた方がいいと、この夜、初めて思ったような気がする。
今回の寄り道、宮沢さんが影響を受けた歌もいくつか歌った。「卒業写真」は、ユーミンさんのようには歌えないけど、宮沢の声で聴いてほしいと歌った。「No
woman no cry」は世界中で一番好きな歌だと言って歌った。いろいろな音楽の旅を続けてきたけど、いつでも日本を意識してきたと言って、沖縄民謡やブラジルのサンバを弾き語った。今、一番歌いたい歌ですと言って、「世界でいちばん美しい島」を歌った。どの歌も心の奥まで響いてきた。もうこのままずっとやってほしいという内容であったが、後半、ゲストのTRICERATOPSが登場した。宮沢さんとTRICERATOPSは2013年に期間限定のミヤトラを結成していたらしい。TRICERATOPSの和田唱の声を聴いていると、グレイプバインを思い出した。「24時間の旅」だったと思うが、最後の方で「Where
the street have no name」と歌っていた。同タイトルのU2の歌詞である。過去のライブでもU2やポリスをカバーしているので、多分に意識しているのだろう。カバーを聴くと、却って原曲の凄みに気付かされてしまうが…。
アンコールの「風になりたい」、「遠い町で」。宮沢さんがいなければ生まれなかった名曲。「繰り返す毎日に追われながら暮らしてても 雨上がりの君の町にかかる虹に気づいてくれますように 遠い町で 気づいてくれますように」という歌詞に、多くのファンが心の拠り所を取り戻せるんだろうなと思う。宮沢さんはいつも「生まれるべくして生まれた歌」という。新しい歌も聴きたいけど、すでにある多くの名曲を何度も聴いて、まだ気づいてない詩の世界に出会いたいと思う。本当に密度の濃い、いいライブだった。
Set List
01 星のラブレター
02. こんな夜は(松山千春)
03. 卒業写真(荒井由実)
04. No woman no cry(Bob Marley)
05. サーサー節(沖縄民謡)
06. aquarela do brasil
07. 世界でいちばん美しい島
08. 氷のブルー
09. 24時間の旅
10. Stimulator
encore
11. カントリーロードが聴こえる
12. 風になりたい
13. 遠い町で