中島美嘉。もちろん、知ってはいたが、全く興味なかった。たぶん、「雪の華」だったと思うが、声なのか発声法のせいなのかわからないが好みではなかった。というか、「どちらかといえば嫌い」だった。ただ、楽曲はいい、メロディがあまりにも美しい、と思っていた。要は、さして興味がなく、ちゃんと聴いたことがなかったのである。先月、映画のDVDをレンタルするついでに、彼女のベスト・アルバム(2005年版)を借りてみた。「50円ならいいや」という軽い気持ちで…。ベスト・アルバムだけあって、いい歌が多かった。軽く聞き流すつもりが、ついつい何度も聴いてしまう。通勤途中、仕事の合間、ふとした瞬間に彼女の歌が頭の中に流れている。ややハスキーな低音、ファルセット、アイドルの誰かに似た声、くるくる変わる七色の声にやみつきになる。嫌いと思ったのは早合点だったのかもしれない。ネットで「中島美嘉」と検索することが多くなっていたある日、「中島美嘉 ライブ」で調べてみたら、今まさにツアー中!県民ホール、「残席わずか」とあった。行ってみるか?行けばきっと何かわかるかもしれない…。
調べていくうちに、わかってきたこと。たとえば、メロディの美しさが際立つ「雪の華」の作曲者、松本良喜という人は、birdの「ハイビスカス」「SPARKLES」「FLOWERS」「Ribbon」の作曲者だった。「ハイビスカス」は、僕がbirdのファンになる決定打になったといってもいい歌である。ベスト盤を聴いて一番先に気に入った「CRESCENT
MOON」は、アレンジがかなり自分好みだと思って調べてみたら、birdのギタリスト、田中義一(よっちゃん)によるものだった。このアレンジはbirdではお馴染みなので、「なるほど、そうだったか!」と膝を打つ。よっちゃんは中島美嘉とつき合っていたこともあったようだから、繋がりがあっても不思議ではない。「永遠の詩」の作詞は、宮沢和史。宮沢さんもbirdとデュエットしたり、ライブでゲスト出演したりと交流がある。カバー曲「接吻」の田島貴男(オリジナル・ラブ)はbirdのアルバム2枚をプロデュースしている。デビュー曲の「STARS」や「WILL」「火の鳥」の編曲・富田恵一はbirdが新境地を開いた6thアルバム「BREATH」のプロデューサーだし、「Love
Addict」の作曲・編曲の大沢伸一は、birdの生みの親である。調べれば調べるほど、birdとかぶってくる。ボーカルの色は全く違うが、音楽世界には似た雰囲気がある。う〜ん、もしかしたら案外気に入ってしまうかもしれない、と予感しつつライブの日を迎えた。
深紅の緞帳に映し出される影絵は、ちょっとサーカスのような雰囲気。開幕すると、バンドの前でバレリーナが踊り、天井から3人の女性がぶら下がっている。オープニングは「CANDY GIRL」。中島美嘉がどこにいるのかと思ったら、宙づりになっている真ん中の女性だった。結構アクロバティックな動きをしながら歌っていてビックリした!2曲目には早くも「雪の華」が登場。この名曲は、最後の方にとっておくのかと思っていたので拍子抜けした。ちょっと音程がズレてる感じがしなくもない。CDと微妙に違う。「GLAMOROUS
SKY」はゆっくり聴きたかったが、3曲ほどのメドレーの中で終わってしまった。「STARS」「WILL」「ORION」はやはりメロディがいいが、やはり音程の微妙なズレが気になってしまう。ペンライトを持参してきている固定ファンらしき観客が8割以上いたが、特に気にする様子もなく、盛り上がっている。自分の耳がおかしいのだろうか…。
MCはほとんどなかったが、途中でファンとの交流タイムがあった。「初めて来た人」と手を挙げさせたら、1割くらいいただろうか。「初めての人は驚かれると思いますが、私は話が下手なので、ファンの方がいろいろ訊いてくれるんです」。本当に、次々と質問を投げかけ、それに答えたり、中にはメッセージ・ボードを掲げて読んでもらったり、プレゼントの花やマヨネーズ(中島美嘉はマヨラー)を手渡しであげている。そんな時間が10分以上続いた。こんなライブも珍しいが、もっと驚いたのはアンコールを待つ間、「美嘉コール」が途絶えることなく続いたこと。ファンの声援がとにかく熱かった。ちなみに観客の男女比は4対6か3対7というところか。60過ぎくらいの男性も散見され、ファン層は厚いようだった。
最後の曲紹介だけMCがあった。「デモテープをもらったとき、ドキッとしましたが、最後まで聞き終わったときは涙が止まりませんでした。いろいろ意見をいう人もいるし、すごいタイトルですが、最後まで聞いてもらえればきっとわかってもらえると思います。この歌は、私にしか歌えないとも思っています。ぜひ最後まで聴いてください。」それが、「僕が死のうと思ったのは」だった。自分もCDで初めて聴いたときは、「何だこれは?」と否定的な印象をもった。歌詞もすんなりとは理解できなかったが、歌詞カードを見ながら聞き直してるうちに好きになってしまった。確かに、言いたいことは最後にあって、それまでの歌詞には人生における苦しみが断片的に散りばめられていて、共感できるものだった。「雪の華」を早々に歌ってしまって、この歌を最後に歌う中島美嘉という人が少しわかった気がした。音程がズレるのは、2010年に悪化した両耳の耳管開放症が完治してないせいかもしれないし、伝えたい気持ちが強すぎて歌い方が変わってしまうという発言もある。そこをうまく歌うのがプロだろうと思うが、少なくともファンは、それでも歌い続ける彼女の生き様を見に来ているように思えた。確かにその一心不乱な姿に心動かされるところがあった。彼女は、美人で歌がうまくてヒット連発の順風満帆の成功者というイメージで見ていたが、実際は違うような気がした。彼女はファイターだと思う。ちょっと応援したくなった。
birdが暖色、夏、太陽のイメージなら、中島美嘉は寒色、冬、月。その両方があって初めて、世界を丸ごと感じられるような気がした。右だ左だ、東だ西だ、キリストだイスラムだ…。地球は丸い星なのに、その上に棲む人類は過去から現在まで丸く1つにまとまることなく、分断の歴史を築いてきた。理念とは裏腹に、グローバル社会になればなるほど衝突が激しくなってしまうのも皮肉な必然なのかもしれない。それでも、「あなたのような人が生きてる 世界に少し期待」していきたいと思う。
♪中島美嘉 Concert Tour 2015
THE BEST 〜DEARS & TEARS〜
神奈川県民ホール
2015年4月5日(日)17:30-20:00 / 1階31列12番
