通勤途中、いつもすれ違う親子がいる。
毎日、毎日、すれ違ううちに、段々、段々と、親しみが湧いた。
親子の姿が見えると、ふと、目で追うようになった。
8才くらいの男の子の顔は、お母さんによく似ている。
母親似のかわいらしい顔。
でも、彼は、自分によく似たお母さんの顔を見たことがない。
彼は、いつでも目を閉じている。
彼は、盲人だから、お母さんの顔を未だ見たことがない。
見たことはないけど、彼はきっとお母さんの顔を知っているんだろうと思う。
自分の顔に似ていることも、知っているんだろうと思う。
お母さんが運転する自転車の後部座席で、彼は、いつも首をうなだれている。
母もまた首をかしげながら疲れたような顔をして、一生懸命、自転車を漕いでいる。
首をうなだれた彼は、母の背中に指をあて、いつも何か描いている。
母は、彼の気持ちを背中いっぱいに感じながら、毎朝、毎朝、懸命に走っている。
そんな二人を見ていると、いつも励まされる。
一生懸命生きている姿は、どこか儚く、健気で、思わず応援したくなる。
応援しながら、励まされている。
いつか彼の目が開いて、世の中の光が見えるようになったら、
彼のために懸命に生きて老いてしまった母親の皺だらけの顔を見て欲しい。
愛、愛、愛、愛、愛。
そこにあるのは、愛だ。
愛でつながった少年よ、母親よ、ガンバレ!ガンバレ!