


久しぶりのbirdライブ。前回のREC LIVE(渋谷クロコダイル)以来2年ぶりになるので、とても待ち遠しかった。会場がよかった。昭和30〜40年代に流行したグランドキャバレー(大きなダンスフロアをもち、生バンド演奏や数々のショー、食事もできる大人の社交場。その後のピンク系とは別物)の内装を残して作られた「東京キネマ倶楽部」は、古い雑居ビルの小さなエレベーターでよっこらあがっていく。一歩足を踏み入れると、数十年前にタイムスリップしてしまったかのようで落ちつく。場が醸し出すレトロな雰囲気の中で、日々の喧騒が遠のいていく…。
19時30分、オープニング。GENTAさん(d)、田中義人さん(g)、金子さん(k)、初参加のベーシストさんに続いてステージに現れたbirdは、スポットライトに照らされて、キラキラと目映かった。ステージまで4、5メートル。視線が合えば気付きそうなくらい、声をかければ誰とわかるくらい、近かった。1曲目は「DA
DA DA DA」だったかな?前回のREC LIVEはニュー・アルバム「NEW BASIC」の録音が目的で、ほとんどが初めて聴く歌だったので、いまいちノリきれないところもあったが、今回はそのアルバムの歌が中心だったので、とても馴染みやすかった。実のところ、「NEW
BASIC」はそれほどお気に入りのアルバムではなかったのだが、今回のライブで聴いて、「こんなにいい歌だったのか!」と再発見の連続だった。「Up
And At It」はウェス・モンゴメリー(オクターブ奏法をはじめ、ジャズギタリストに多大な影響を与え続けている人、1923-1968)のカバー曲だが、田中義人のギターもかなり格好よかった。birdの歌の力も一段と強くなっていた。2009年、ビルボード東京のライブでゲストの宮沢和史さんとのデュエットを聴いたとき、歴然とした力の差を感じてしまったものだが、期待どおりジャンプアップして、さらにすごい歌姫になっていた。「パズル」や「GAME」などの神業的なリズム感も健在だった。この日も新譜のライブ・レコーディングを兼ねていて、新曲も披露されたが、なかなか粒ぞろいの名曲という印象だった。
この日のMCは、一段と冴えていた。会場のある鶯谷駅近くにある銭湯「萩の湯」へ行ったときのエピソードなのだが、大部分を占める年輩のお客さんの中にいる自分に番台からチラ見された話などなど、面白かった。ちなみに鶯谷という名前は、江戸時代、この地に来た京の住職が「江戸の鶯(ウグイス)は訛っている」と感じて、わざわざ京都のウグイスを運ばせたのが由来らしい。一部で観音様似といわれるbirdも京女ってところにちょっと不思議なつながりを感じたのは、後日談。長く愉快なMCに続いて対極的ともいえるしっとりとした歌「それを愛と」が琴線にビビッときた。「どんな言葉より まず抱きしめる それを愛と言うんでしょう」。アルバムでは軽く聞き流していたが、この日は、すごく強いものが伝わってきた。家に帰ってから何度も聴いてみているが、アルバム録音時より明らかに今宵の歌の方がよかったように思えた。
次の長〜いMCは、旦那(みうらじゅん)にせがまれて見に行ったという「テルマエ・ロマエ」の話だった。映画の話題といっても、銭湯つながりである(笑)。キャッチーでとても楽しめたと言っていた。ちなみにその前に見たのが「戦火の馬」だそうだ。「なんせスピルバーグですからすごくいいんですが、馬に感情移入できないと楽しめへんけどもな」ってなコメントが、図星だった。極彩色のワンピースに裸足で不思議なダンスを繰り広げるbirdは、やはり自分の中での「極楽鳥」だった。「楽しんでますか?」と時折観客を気遣いつつ、ご本人はとても楽しそうであった。たっぷり2時間、南国の歌の世界にひたって満腹になりました。