今日、ぼくのカブトムシが死んだ。パパと一緒にお墓をつくってあげた。
ぼくの手からぽとりと穴に落ちたカブトムシに向かって、また生まれておいで!と手を合わせた。そうしたら、去年のことを思い出した。それは、とても暑い夏の日のことだった。
仕事から帰ってきたママが、ぼくにお土産をくれた。
ティッシュ箱に何か入っているらしい。小さな穴が開いている。中からゴソゴソと変な音。
「なんだろう?」
少しドキドキする。でも、ワクワクしながら箱を開けた…。
黒くて、大きくて、長〜い角をもったカブトムシがゴソゴソ動き回っていた。
「カブトムシ〜!」
本物のカブトムシを見るのは、初めてだった。はじめ、少し怖かった。でも、だんだん見ているうちに触りたくなってきたので、パパに手の上に乗せてもらった。
カブトムシは爪をかけて、ぼくの手をよじ登ってきた。
「ぼくのこと、気に入ってくれるかなぁ?」
ぼくは、くすぐったいのを我慢して、カブトムシが登ってくるのを眺めていた。
「カゴの中も可哀相だけど、じょうそうきょういくのためだからね!」
そうパパは言ったけど、ぼくには「じょうそうきょういく」のことがよくわからなかった。
とにかく、カブトムシを飼うことがうれしかった。
ぼくは、保育園から帰ってくると、必ずカブトムシを観察した。エサは、ペットショップで買った「パワーアップゼリー」を、ぼくが自分であげた。
カブトムシは、ぼくと同じでとても食いしん坊だった。
「カブトムシは、だいたい9月に死ぬみたいよ」とパパとママが話していたけど、ぼくのカブトムシは特別長生きすると思っていた。
8月が過ぎ、9月が過ぎても、ぼくのカブトムシは、元気モリモリだった。
でも、10月になって、寒い日が急に続いたら、ゼリーをあまり食べなくなった。パパ がカゴをダンボール箱に入れて、少し温かくしてくれた。
「春まで冬眠させようね!」とパパが言ったので、ぼくも信じていた。
10月も終わった。ぼくは、ときどき箱を覗いて、観察していた。
前のように、元気よく歩いたり、エサも減らなくなっていた。
11月のある寒い日、久しぶりにカブトムシを見ることにした。パパに箱から出してもらい、手に乗せてよと頼んだ。
「もう、死んじゃってるよ」とパパが言った。
「冬眠しているんでしょ!」とぼくは強く言ってみた。
けど、やっぱり死んじゃっていた。最近、元気なかったからなぁ…。
パパが角をもって裏返してみると、小さい、丸い虫がたくさんくっついて動いていた。カブトムシの身体のあっちこっちを、出たり入ったりしている。
「カブトムシさん、かわいそう」とぼくは思った。死んじゃったのも可哀相だけど、死んで小さい虫に食べられているのも可哀相だった。
ぼくは、パパと庭に穴を掘って、カブトムシのお墓を作った。
「ポトンッ」と暗い穴に落ちても、まだ動きだすような気がしたけど、スコップで土をかけてしまった。