

JET STREAM
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Music Around
The World
東京国際フォーラム ホールA
2012/03/10 17:00-19:10
中学生の頃、まだCDもない時代の話。Victor製のラジカセを親に買ってもらった。横幅30cm、高さ20cmくらいの小さなものだが、2つのスピーカーからステレオで音楽が聴けることにまず感動。さらに、ラジオ放送を直接テープに録音できるラジカセならではの機能に感涙!当時は誰もがやっていたエアチェックで、「自分の歌」を収集する楽しさを知ったように思う。その頃(今もだけど)、僕は部屋の電気を真っ暗にして寝ていた。枕元に置いたラジカセの緑色の小さなインジケーターが暗闇では眩しく、格好良く見えたものだ。スリープ機能を使って、FMを聞きながら床につく日常。寝つきがよかったせいで、ほとんどラジオを聞かないうちに眠っていることが多いのだけど、よく聴いてたのがエフエム東京(TOKYO FM)だった。午前零時、ジェットエンジンと気流の音とともに城達也氏の声が「ジェットストリーム、ジェットストリーム…」と繰り返す。そして、テーマ曲「Mr.lonely」が流れてくると、今宵の夜間飛行が始まる。一部の金持ちを除けば、海外旅行など夢のまた夢という時代に、この番組は音楽を通して世界旅行にいざなってくれたのだ。中学生にとっては大人びた選曲だったが、きっと背伸びしてたのだろう。漠然とした憧れの「外国」がラジオの向こう側に確かに見えていた。
会場は、やや年輩の男女で埋め尽くされていた。TOKYO FM開局40周年記念として2010年に行われたのに続く、第2回目の開演になる。ラジオと同じようにジェットエンジンと気流の音が響き、大沢機長のナレーションに続き、♪「Mr.Lonely」の演奏。乾いたスポンジに水が浸み入るように、身体中が音楽で満ち満ちて、にわかに中学生の頃の懐かしさが込み上げてきた。映画「オズの魔法使い」のテーマ♪「Over the rainbow」、ジャズのスタンダード♪「Fly me to the moon」、ビリー・ジョエルの名曲♪「New York State Of Mind」…。誰もが知っているスタンダードがビッグバンドとゲスト・ミュージシャンのコラボレーションで演奏され、何ともお洒落で贅沢な時間が過ぎていく。中学生の頃はただ何となく「大人の世界」に憧れて聴いていただけのように思っていたが、今聴いてみると、それだけではなく、自分の感性にもぴったり寄り添う音楽だったことがわかって、静かに嬉しかった。
今回のゲストは、石井達也、ゴンチチ、寺井尚子、LISA。石井達也もよかったのだが、全体のテイストの中ではやや浮いていた感があった。♪「浪漫飛行」なんて打ってつけのようだけど、むしろ♪「Moonriver」の方がよかった。寺井尚子さんのバイオリンはすごく美しく、LISAさんの歌も迫力があって本当によかった。ゴンチチはゴンチチらしさを敢えて抑えて、「ジェットストリーム」の世界観に歩調を合わせていたように思えた。いつもの軽妙なトークもなかったが、その代わりに大沢機長が度々登壇して、世界各国の街角の雑踏や人々のにぎわいを語ってくれた。台本をもたずに語っているときもあり、さすが映画スターだと感心してしまった。終盤、大沢さんがステージから客席に降りて走り回る一幕もあり、大盛況のうちに♪「Mr.lonely」が流れ、定番のナレーション「夜間飛行のジェット機の翼に点滅するランプは、遠ざかるにつれ、次第に星の瞬きと区別がつかなくなります。お送りしておりますこの音楽が、美しくあなたの夢に溶け込んでいきますように。お送りしてまいりました音楽の定期便、ジェットストリーム。夜間飛行のお供を致しましたパイロットは、わたくし大沢たかおでした」で終幕となった。たまたま気が向いて足を運んでみたライブだったが、予想以上、期待以上に満足感の高いものだったので、第3回があれば必ず行きたいと思う。最後の歌は、♪「What
a wonderful world」。「ジェットストリーム」の世界観を象徴するようなエンディングに、しばらく幸せな余韻で満たされていた。