プランクトンというプロモーター会社が開催するジャズ・イベントの第1回目。社員らしき女性が司会をしながら、開催に至るまでの熱い想いを語っていた。遠目には原日出子に似た日本美人であったことはさておき、一人目は、エミ・マイヤーというシアトル在住のミュージシャン。父親がアメリカ人のハーフで、見た目も日米半々という感じだったが、日本語は上手だった。1曲目がピアノ弾き語りで、2曲目からダブルトーラスというジャズ・ユニットが加わった(piano:林正樹、sax:田中邦和)。なかなかよかったが、好みではなかった。
 2人目が畠山美由紀(guiter:小池龍平、bass:織原良次、piano:村上ゆき)。今回のイベントに彼女が出演するというので来たのだが、歌を聴くのはほぼ初めてである。さて、どんな感じだろうと、興味津々で登壇を待った。実のところ、僕は畠山さんの音楽を全く知らずに来たのだった。毎週土曜日の昼、FMヨコハマでオンエアしている「Travelin' Light」のDJをしていて、僕はプールへの行きと帰り各々20分ずつ聴いているだけである。音楽番組なのだが、特に音楽ジャーナリスト、カール南澤さんとの「HITS BOX」のコーナーでは往年の名曲が詳細なエピソードとともに紹介されてとても面白い。この番組で、僕は彼女の声がまず気に入って、次に人柄に惹かれるようになった。おしゃべりを聞いていると、その人の嗜好、感性、雰囲気、性格、おおまかにいえば人柄がわかってくるし、自分との相性も何となくわかる気がしてくる。番組内で1度か2度は彼女の歌を聴いたのだが、それはあまりピンとこなかったので、果たして、自分の期待どおりかどうか…?この日は夕方からライブにもかかわらず、彼女は生放送の「Travelin' Light」に出演していたので、ちょっと驚いた。
 畠山さんが歌い始めてすぐに、来てよかったと思った。やはり、声の魅力なのだろう。太く広がりがあって、温もりのある声である。真っ白なスーツにスラリと伸びた手足が格好良かった。そして、歌うときに、ちょっと「変顔」になるのも魅力的だった(笑)。歌の世界に入り込んで、顔がどうだなんて気にしてない風である。トークは軽妙かつ洒脱で、「Travelin' Light」と同じだった。とてもフレンドリーで快活、バンドメンバーと共に極自然に楽しげな雰囲気を作っていく。それでいて、歌に入るとガラッと変わる。少し井上陽水さんに似ている、と思った。 
 曲目は覚えてないが、ジャズスタンダードとオリジナルがあった。特に感動したのは、英詩の意味を解説してから歌ったスタンダード・ナンバー。僕はネルソン・リドルがアレンジしたリンダ・ロンシュタットのカバーで知っていたのだが、どちらかといえば地味な曲である。しかし、彼女が歌うことで改めていい歌なのだとわかった気がした。会場で購入した「コーヒー&ミュージック」というアルバムの中にスザンヌ・ヴェガの「Gypsy」のカバーがあったが、その歌声がオリジナルに酷似していて驚いてしまった。カバーの場合、必ずしも似ている必要はないと思うのだが、大抵の場合はオリジナルの方がしっくり馴染む。スザンヌ・ヴェガの場合もあの独特の歌い方が魅力なので、畠山さんのアプローチはいいなと思えた。ちなみにカバーが原曲を越える例で思いつくのは、夏川りみの「涙そうそう」くらいだ。ビギンの比嘉栄昇が歌う原曲もとってもいいのだけど、夏川りみによってさらによくなったと思える。
 休憩を挟んで、第2部はキューバのピアニスト、オマール・ソーサとNYを拠点に活躍するタップダンサー、熊谷和徳の共演である。フリージャズのようなピアノと打楽器のようなタップの競演は、意外に相性がよい。国境を越え、音楽の垣根を超えた二人のステージは、自由や世界の広がりを感じるものだった。オマールさんはとってもノリのいい人で、最後には会場総立ちの大盛り上がりで終演となった。再び登壇した司会者が、涙を流してコンサートの成功を噛みしめていたのが、印象に残った。個人的には、畠山さんを知るいい機会となった。これからラジオを聴いていても、より身近に感じられると思う。

♪ジャズ・ワールドビート 2016
めぐろパーシモンホール
2016年7月16日(土)17:05-20:05/1F9列14番