著者:定成 寛
なんの変哲もない一見ありふれたタイトルでありながら、中身は驚くほど完成された本である。私もときどきジャズを聴きかじっているものの、それがどの時期の何というジャンルに属するのかチンプンカンプンで、20世紀に端を発するジャズの歴史もなんにも知らないのである。知らなくても困らないといえば困らないのだけれど、知ってるともっと楽しいんだ!ということが、この本を読むと実感できる。
例えば、「ジャズの帝王」と呼ばれているマイルス・デイビス。私はアノ濃い風貌にちょっと抵抗があって、ちゃんと聴いたこともないのだが、この人は40年代以降のあらゆるスタイルを実践していて、「マイルスを聴けばジャズのすべてがわかる。だからこそ帝王なのだ」というような話が、1ページ目から最後のページまでギッシリと詰まっているのである。
また著者は、一体いつの間にこれだけ多くの映画を見たのか不思議なくらい沢山の映画を見ていて、ジャズと映画の関わりなんかを情熱を込めて書いている。その行間からは、ジャズと映画への愛が満ちあふれていて、淀川長治もビックリするくらいなもんである。これは、しかし、そういったジャズや映画についてのウンチクもさることながら、文章の構成力や読者に話しかけるような文体に優れた能力があってはじめて為せる技で、ホントにすらすらと読めてしまうのである。
本文中には、「ジャズ喫茶の楽しみ方」とか「はじめて聴くならこのCD」みたいな実践的な内容も盛り込まれていて、まさに座右に置いておきたい一冊である。ちなみに著者入魂のホームページは、このT roomからもLinkしているので、興味をもった方はそちらも見ていただきたい。
(ブックマン社)