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「非属の才能」
著者:山田玲司
「行列なんかに並びたくないあなた。おめでとうございます」という帯のコピーに思わず手に取った本である。非属とは、「どこにも属せない感覚」という意味の造語。漫画の取材で、これまでに数百人もの人に会ってきた著者が、約100人目のオノ・ヨーコさんのインタビュー中に思いついたのが、「非属」という概念だったそうである。群れることで幸せになれる時代は終わり、これからは斬新な発想や強烈な個性が発揮できる環境づくりが必要、というのが著者の主張である。
漫画を読まないので知らないが、山田玲司氏は、「Bバージン」や「ゼブラーマン」などのヒット作で知られる人である。子供の時からかなり変わっていたようで、小学校ではノートを一切とらず、代わりに漫画を描いていたという。整理整頓も苦手で、いまだに机の上も仕事場もグチャグチャ。しかし、こうした無秩序な資料の山の中で一見関係なさそうなものが結びつき、新しいアイデアが生まれたりするのだという。山田氏の主張は、とにかく常識を疑えということでもある。それは例えば、「僕たちは『国のために死ぬのが美徳』という常識が一瞬にして『消費こそが美徳』になった国に住んでいる」という一文にも表れている。
山田氏は、同調と協調の違いについても、繰り返し述べている。協調は大事だが、この国では、同調を強要され、うまく同調できないと群れから追放されてしまうという。発明王エジソンは、わずか3ヶ月で放校処分になったそうだが、そんな彼のために母親は、地下に実験室を作り、旺盛な好奇心のままにいろいろな実験ができる環境を作ったという。電球を発明するまでに約1万回もの失敗をしたエジソンは、「失敗したのではなく、1万回うまくゆかない方法を見つけたのだ」と言ったそうだ。東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏は、「いつも成功してますって奴がいたら、そいつは新しいことをやらない奴だ」と教えてくれたという。「ものは考えよう」というが、その考え方の事例が山ほど紹介されている本である。
「孤立」と「孤独」は違うという話もあった。人が群れる1つの理由は孤独が怖いからだろう。しかし、孤立している人が必ずしも孤独なわけではない。むしろ、群れる人ほど孤独になりやすいという指摘も、一理あるかもしれない。二十歳でアップル社を創業したスティーブ・ジョブズ氏は、異端児ゆえに自分の会社を追放されてしまうのだが、その後経営が傾いたアップル社は再びジョブズ氏を迎え入れ、彼はそこでiMacやiPodなどを生み出し、会社を立て直してしまう。そんなジョブズ氏が毎朝していることは、「今日が人生最後の日だとしたら、今日スケジュールしたことをやるだろうか?」と自問することだそうだ。
行列に並ぶのもそんなに嫌ではないが、しかし、行列に並ばないといけないように思うのはとても嫌いである。そんな自分にも非属の才能がちょっとくらいあるのかも、という気分にさせてくれる本である。
(光文社新書)
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