ひかり


出張で新幹線を利用することが多いが、「のぞみ」ばかりである。

だが、今回の行き先は米原なので、久しぶりに「ひかり」に乗ることになった。

本当に久しぶりだったので、昔の記憶が蘇ったのだろう。

住み慣れた町を離れ、親しい友だちのいる学校から転校したときのこと。

初めて乗る「ひかり」にワクワクしていたのに、

次第にどんよりと重苦しい気持ちに胸がしめつけられていく。

博多から東へ向かう山陽道には、トンネルが多い。

「トンネルを抜けると、そこは雪国だった。」

川端の有名な書き出しに似て、

暗いトンネルを超特急が走り抜ける度に、

心の風景は激しく変わり、

引き裂かれるような思いに痛めつけられてしまったあの日のことを、思い出していた。

少年期を駆けずり回った野原や川や海や校庭が遠ざかるほどに、

故郷への思いは胸に迫ってきたのだ。

30年以上前の忘れていた感情が、

「ひかり」に乗った瞬間に蘇ったんだなと半ば驚きつつ、

いや、人の心は案外そういう風にできているんだなと思える。

今、この気持ちを忘れないように慌てて書き留めている。

同じ時、或る知人の家にも、福島から非難してきている子がいて、

故郷に帰れる日を待ちわびているという。

僕が転校したのと、そう変わらぬ歳の女の子なのだという…。