「ヘリオット先生とドノバンおばさん」
 
 
原作:ジェイムズ・ヘリオット
絵と文:うえくさけいこ
 
 
 おそらくは実話もしくは実話ベースのイギリスを舞台にした物語。ムツゴロウさんも絶賛の絵本である。ヘリオット先生は獣医さんで、ドノバンさんは動物好きの名物おばさん。体つきや着ている服装や表情からすぐにその人となりが伝わってくるのは、絵の力によるものだろう。最初のページでは、我が家にもいるウェルシュ・コーギー犬がヘリオット先生の診察を受けているのだが、その神妙な顔つきがいかにもコーギーっぽくて笑ってしまう。それにしても登場する動物が多い。犬はもとより、キツネがジェントルマン風にステッキをもってたり、ロバがベンチに座ってお腹を見せてたり、よくよく見ると細部まで愉しめる。
 話の中に飼い主に見放された犬が出てくるのだが、その犬を撫でようとしたヘリオット先生にお手をする展開がとても印象的だった。まさにこの瞬間、この犬の運命が決まったのかもしれない。誰にでも訪れるであろう「運命の分かれ道」は、意外に些細なことで決まってしまうもの、ということをこのエピソードが教えてくれてるようにも思えた。
 小さな子供にも読めるような絵本ではあるけど、そこには命の儚さや出会いの不思議さや思いやりの大切さなどが温もりのある絵とともに丁寧に描かれ、読み終えたときにはとても静かな澄んだ気持ちになっていることだろう。日曜日の午後、美味しい英国紅茶などを飲みながら、ゆったりとくつろぎつつ読みたい一冊である。
 
(集英社)