
車通勤の往復約2時間と、夜、眠る前の10分間、ほぼ毎日、FMラジオを聴いている。それは、旅に似ている。旅先で出会った風景や人、食べ物を好きになるように、ラジオでたまたま聴いてファンになることがある。GLIM
SPANKYとの出会いもそうだった。2年ほど前、仕事帰りのカーラジオから流れてきたのが、彼らの1stアルバム収録曲の「サンライズジャーニー」だった。亀本寛貴のギターリフのかっこよさ、松尾レミのハスキーヴォイスの魅力、それと歌詞が心に響いた。「♪仲間は行き先知らないで 乗り込んで行ったな…きっと僕等の乗る車じゃない」。デビュー時の不安と覚悟が入り交じる心象風景。社会人になった頃、誰もが遭遇する景色かもしれないが、ある程度歳を重ねてきた自分にも刺さってくる普遍性が感じられた。人生は、日々、選択の連続なのだ。今、何をやるかということは、このバスに乗るか、乗らないのかという選択なのである。ことの重要性に気付いていること、そのことを大事にしたいと思っていることに共鳴した。
GLIM SPANKYは、長野県の高校生が文化祭用に作ったバンド。亀本(g)は生徒会長、松尾(v、g)は副生徒会長という経歴もユニークで興味を感じた。後々調べてみると、「サンライズジャーニー」のベースは、くるりの佐藤征史だった。いつものことながら、好きなもの繋がりの妙を感じてしまった。今、読んでいる「立花隆の最終講義」という本にもこんな風に書かれている。曰く、「話は、死、マラルメ、自身の20歳の頃、物理、宗教、スーパーコンピュータ、ヴィーゴ、デカルト、世界史、地理、社会と目まぐるしく変わっていく。しかしそれは全て1本の糸でつながっていて…。」。まさにその通りなのだ。自分のアンテナをビビッと震わせ、心のフックに引っかかったものは、どこかでつながっている。点と点から線になるように、色々なことが縦横無尽につながりあって、自分の中で広がり続けている。それは宇宙が拡大し続けていることと似ているように思える。勝ち負けではなく、世界に1つだけの自分の宇宙を創る歓びがある。
ステージ中央に松尾レミと亀本寛貴、他はベース、ドラム、キーボードという編成だった。ドラムは女性だったが、とてもパワフルだった。亀本のMCで、初めてフェスに参加したときに、フェス自体が初体験で興奮しまくり、他のバンドにいた彼女のドラムに一目惚れしてしまい、「あ、あのドラマーが欲しい!」と言って、今に至るというようなことを話していた(笑)。松尾レミのMCでは、いつかのライブ中にスズメバチが顔の周りにまとわりついた話があった。この盛り上がりを止めたくない、刺されてもいいと覚悟を決めて演奏していたら、隣にいた亀本が演奏を止めてしまったのだという。「あのとき、松尾さん、大変でしたよね」とさん付けしている亀本に対し、「折角自分が続けていたにもかかわらず、亀本が止めてしまった」と呼び捨てにしていたのが、二人の関係性を物語っているよう面白かった。亀本は、あくまで松尾レミの歌を邪魔しないようなギターに徹していると何かで語っていた。この絶妙な関係がまさにGLIM SPANKYらしさであり、その唯一無二の歌とギターサウンドが最大の魅力である。
ライブで改めてわかったのは、松尾レミの歌のうまさだった。とかく声質に耳を奪われるが、いわゆる歌心があるのだろう。メロディへの言葉の乗せ方がとても自然なので、詞がすんなり届く。弾き語りの曲もあったが、歌とギターだけで十分な迫力があった。彼らにとって5年ぶりの野外音楽堂ライブだったらしいが、そんな野外にピッタリな曲をやりますと言って演奏したのが、「ALL
OF US」だった。「♪隣にいる人々まで 自分事の様に思えるほど ちゃんと愛しながら生きてたい」。CDでは聞き流していたが、この歌詞に松尾レミの人間性が現れているように思える。「褒めろよ」とか「愚か者たち」のように彼女の攻撃的な歌も、そこにはちゃんとした人間であろうよというメッセージが感じられる。彼らはゆとり世代、あるいはミレニアル世代になる。いわゆるZ世代の前である。Z世代が現実主義なのに対し、ミレニアル世代は理想主義といわれたりもするらしい。個人の特性を世代でくくれるものではないが、松尾レミの歌詞には、あるべき理想が描かれているように僕には感じられる。和を重んじながら、無意味な同調には屈しないという強い信念が感じられる。
2時間があっという間に過ぎた。亀本のMCで、「松尾さん、上下ともに真っ赤ですごいですよね」と話を振ったところ、「え、何が?」と意に介さない反応が面白かった。二人の関係は素晴らしい。スズメバチの話もそうだが、割と手堅い現実路線をいく亀本がいて、だからこそ、思う存分に松尾レミが羽ばたける。二人が揃って初めて最強のロックになることを、初ライブで確認することができた。2年前に聴いた「サンライズジャーニー」でビビッと震えた感触に間違いなかったと確信する100%満足のライブだった。
set list
1. アイスタンドアローン
2. Singi' Now
3. 褒めろよ
4. The Trip
5. 闇に目を凝らせば
6. こんな夜更けは
7. Up To Me
8. ハートが冷める前に
9. grand port
10. Freeder
11. All Of Us
12. 愚か者たち
13. E.V.I
14. 怒りをくれよ
15. 大人になったら
16. Circle Of Time
ENC.
17. ウイスキーが、お好きでしょ
18. 形ないもの
19. ワイルド・サイドを行け

♪GLIM SPANKY
~GLIM SPANKY 野音ライブ 2022~
日比谷野外音楽堂
2022年5月28日(土)18:10-20:15/C8列84番