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「中国人の愛国心」
〜日本人とは違う5つの思考回路〜
著者:王敏
今年(2005年)の4月、北京や上海、香港など中国各地で反日デモがあった。多数の若者や労働者が日本大使館や日本料理店に押しかけ、投石し、日本車を破壊するなどの激しい行動に出た。反日の背景には、靖国参拝、歴史教科書、尖閣諸島などの問題があると云われている。中国では先の戦争を抗日戦争と呼んでいるが、今年はちょうど抗日戦争勝利60周年の節目に当たり、反日感情がぶり返しているとも云われる。9月には北京で大規模な記念行事も行われたが、「反日教育のためではなく、中国の平和、日中友好のため…」という指導者の発言もあったようだ。こうした中国の動向に対して、日本人の見方は大きく2つに分かれているようにみえる。1つは、隣国に配慮すべき、もう1つは、内政干渉だという反発。
こうした中、執筆、発行されたのが本書である。著者の王敏(ワン・ミン)さんは、長く日本に住み、日中比較研究、日本研究、宮沢賢治を専門に研究している人で(現法政大学教授)、中国人と日本人の違いについて、明快に分析、わかりやすく解説している。キーワードは、「愛国」「歴史」「徳」「中華」「受容と抵抗」の5つ。
たとえば、「愛国」。日本人は近代以後、ナショナリズムと結びつけてイメージすることが多いように思うが、中国では、紀元前の四書五経に端を発し、その後の儒教精神のなかで受けつがれてきた中国人のアイデンティティなのだという。
「歴史」に対する認識もかなり違っている。ふつうの日本人にとって、歴史は「過去」のことであるが、中国人にとっては「現在」のことだという。空間的に広い視野をもち「ヨコの視点」で物事をみる日本人に対し、中国人は歴史的な「タテの視点」でものをみるため、現在のことも歴史を踏まえて捉えるのだという。靖国問題を国際的、一般的な問題として対処しようとする日本に対して、中国は歴史的な視点でとらえ、現在が枝葉とすれば、根っこにある中国侵略に帰着して考えるため、両国の議論が噛み合わないのだという。
この本は、発見の連続だった。そして、根底にある人間への深い洞察と愛情が感じられて、強く感銘を受けた。「おわりに」で日本研究者の王勇教授の言葉として、「日本文化を研究することは中国文化を知るためでもあります…」という言葉が紹介されていたが、全くその通りであり、また「人」と「人」の間においても同じだと思えた。「自分が正しい」という立場に固執して相手を理解しようとしなければ、結局、自分のこともわからぬままになってしまうのだろう。
日中関係は悪化しているが、その一方で、民間レベルでの交流は深まり、日本のアニメやファッションは中国の中にどんどん広まっている。そうやって外国のものを受容しながら、一部で抵抗し、そしてまた受容するというサイクルが中国の歴史だったのだから、これからも様々な形で交流を深めていくことで、日中双方がお互いを知り、そして自国をより深く知ることになるに違いない。本書は、日中友好の希望の書だと思う。王敏さん、謝謝!
(PHP新書)
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