THE BOOM
平成二十三年 
公演「光」

横浜BLITZ
2011/04/29

 宮沢さんは、今宵も冗舌だった。ブームの4人+キーボード(鶴来正基さん)のアコースティック演奏で幕を開け、2曲目で早くも「風になりたい」を歌った。
 ツアー2日目。手探りで始まったライブだという。中学生の頃から人前で歌ってきて、当たり前と思ってたことが、3月11日を境に歌えなくなったという。予定されていたニューアルバム「よっちゃばれ」の発売は無期延期。ツアーも中止という話もあったという。準備してきたものを全て白紙に戻し、ゼロから話し合いを重ね、今日の日を迎えたことに心から感謝していると熱く、何度も語る姿はこちらにも切々と届くものだった。
 「自分たちに何ができるのか?」と問いかけて、ツアーをやりながら「言の葉募金」をを始めることにしたという。手の平くらいの紙製の葉を300円/枚で買ってもらい、メッセージを書いてもらう。集まった義援金を被災地支援に役立てるというもの。前日のライブ(調布)で集まった「言の葉」が、ステージ上に立つ樹に飾られていた。
 「何ができるか」は、1つではない。人それぞれできることをすればいいとも語った。東北の復興を祈って歌われた「島唄」はいつにも増して強力なパワーが感じられた。歌の力で救われる人もいると信じられた。新曲も1つだけ歌われた。「ゆっくりおいで」という歌。天国へ行ってしまったミュージシャンが、まだ地球で生きている愛する人にかける言葉。「ゆっくり寄り道しながらおいで」。自分にとって特別な歌ですとの紹介で歌われた「朱鷺」、「からたち野道」もよかった。そして、前半最大の盛り上がりは、「夜道」〜「過食症の君と拒食症の僕」だった。3rdアルバム「JAPANESKA」(90)収録のこの2曲は、宮沢さんの作詞力、歌唱力の賜物である。いつ聴いても笑ってしまう!
 アコースティックが終わると「TROPICALISM」からの幕開け。喜納昌吉によるウチナーグチ訳で歌われるこの歌は、混沌とした東南アジア方面の神秘的なパワーがみなぎっていて、これで会場が総立ちになった。そしてなお、宮沢さんは冗舌だった。中盤、宮沢さんがライフワークにしている「寄り道」ライブのコーナーがあった。ステージにひとりの弾き語りは、彼の歌の力を際立たせ、聴き応え十分だった。美空ひばりの「みだれ髪」という歌は、福島のとある海が舞台だという。そこにポツンと建つ白い灯台を美空ひばりに重ね合わせて書かれた歌。他には何もない淋しい海に、震災後、宮沢さんはひとり、行ってみたという。まさに想像を超えた地獄絵だったという。ギターをもっていったものの、何もできず無力感を抱えて帰ってきたと、肩を落として語った。
 後半、これは始まりの歌だと「berangkat〜ブランカ」が歌われた。JALバリ島キャンペーンCMに使われた歌だが、まさに新しい世界への旅立ちをイメージさせる。今、日本を勇気づける歌のひとつであろう。もう1つ新曲が歌われた。すでにリリースされている「暁月夜〜あかつきづくよ」は、石川さゆりとのデュエット曲。なんと、カラオケ演歌部門で1位を続けているらしい。このままの勢いで12月31日を迎えたいと言っていた(笑)。つくづく宮沢さんは、前に出ていく人なんだなと思う。ブームはこの人がいることでブームなんだなと改めて思った。安定した形である。
 2度目のアンコールは、ツアータイトルにもなっている「光」で締めくくられた。「昨日より おとといより 知り合った日の君よりも 今ここで 見つめている 君が一番きれい」。宮沢さんの詞には純文学の薫りがする。この人の作る音楽に救われる人、特に女性はたくさんいるだろうなと思う。日本人にとって、とてもラッキーなことだ。「JAPANESKA」のライナーノーツに、宮沢さんのコメントが載っている。「ちょっとした神さまのいたずらで、いつかオモチャや本やTVや車なんかがすべて取り上げられた日が来たら、みんな毎日いらいらして家をこわしたり人を殺したりするでしょうね。でも僕はだいじょうぶ。カバンの中にしまっておいたステキな歌をひっぱりだして毎日毎日歌うでしょう。あなたにもわけてあげたい。」最後の一文。今もその気持ちを忘れずに、彼は歌っているんだなと思う。2時間半以上のひとときは、新しい旅立ちの「光」を取り戻すための音楽だった。