THE BOOM 歳末御礼公演
「平成よっちゃばれ」

2011/12/24 渋谷公会堂

 オリジナルとしては13枚目となる「よっちゃばれ」の発売直前に東日本大震災があり、発売は無期延期、ツアーも先延ばしとなった。急遽、内容を変更して行われた「春夏公演 光」ツアーは復興メッセージ色の強い、内容的にも極めて充実したものだったが、宮沢さんは自信作「よっちゃばれ」を早く聴いて欲しい、歌いたいと繰り返し、かなりの残念がり様だった。それから半年が過ぎ、ようやく「よっちゃばれ」が日の目を見た。石川さゆりとのデュエット曲、「暁月夜」が先行シングルになっていたので多少の心構えはあったとはいえ、これほどまでに演歌やら歌謡曲に傾倒した内容だったとは、正直、驚きだった。
 満を持して迎えた「平成よっちゃばれツアー」。甲州弁で「集まって」を意味する「よっちゃばれ」の文字通り、渋谷公会堂には多数のファンがクリスマス・イブにもかかわらず集まっていた。「あれっ、レモンがない!」そう、いつの間にか、渋谷C.C.Lemonホールは渋谷公会堂に戻っていた。ネーミングライツの契約期間(2006.10/1-2011.9/30)が過ぎ、更新されなかったらしいが、この5年間に命名権として4億2,000万円が渋谷区の収入になったという。広告の世界は、桁が違うから恐ろしい。
 さて、17時15分の開演とともに怒濤のような音楽シャワー、いや洪水といった方が近い。1曲目は新作「よっちゃばれ」から演歌「流れ 流されて…」。宮沢さんの熱唱に聴衆は完全に心を鷲掴みされる。そして2曲目は「いいあんべえ」。この曲のグルーブは強烈だから、あっという間に会場は総立ち、一気にピークに達したような熱気に包まれた。「今日のブームはスゴイ!」と誰もが悟ったに違いない。4曲続いたところでMC。「今日、歌えることが嬉しい。23、24日とこんなにいい場所が空いてたなんて」で会場が笑う。「東京タワー」「月光」と静かな曲を挟んで、石川さゆりとのデュエット曲「暁月夜」、そして「島唄」では13名の太鼓隊が登場して大いに盛り上がり、もはや、祭りの様相を呈してきていた。ツアーメンバーも充実していて、マニピュレーターやブラス、ギター、パーカッション、キーボードなど総勢10名。とりわけ大城クラウディアさんのボーカルが凄かった。「暁月夜」で石川さゆりパートを歌ったかと思うと、「いいあんべえ」ではゴスペルシンガーのような歌声である。着物姿で三線を弾いたかと思えば、ギターも弾きまくる。日系アルゼンチン人らしい、スケールの大きさを感じさせる歌声である。しかし、彼女にも益して、宮沢さんの歌はさらにパワーアップしていた。まるでサイヤ人がスーパーサイヤ人に変身したかというくらい、言霊がメロディにのって響いてくる。数あるレパートリーの中からどんな歌が選ばれるのか、ワクワクしながら期待を悠々と超えていく歌と演奏が続いた。
 宮沢さんのMCの中で、結成して22年になるという話があった。ブラジルやバリなど様々な国の歌と日本の歌のミックスから新しいものを作ろうとしてきた話、しかし、一貫して日本の歌であろうとやってきたこと、「フェイレスマン」では賛否が分かれた話、南米で出会った日本人たちから逆に日本への思いを強くした話など、今宵の宮沢さんもすこぶる冗舌だった。
 ブームにはクリスマス・ソングが1曲もないという話は意外だったが、その代わりにと歌われた「月さえも眠る夜」の終わりから「きよしこの夜」に変化し、白い雪が舞うステージは、なかなか心憎い演出だった。「愛という言葉」「ゆっくりおいで」など「よっちゃばれ」で生まれた魅力的な歌が熱唱された。そして、アンコールで歌われた「情ションガイネ」では、子供たちダンサーがいっぱい出てきて元気よく盛りあげてくれた。「今宵は泣いても 明日は笑おうぞ」は美空ひばりの名言、「四角四面にゃ生きられず 丸い地球にぶら下がり」が宮沢の名言だなんて、MCもずっとのりまくっていた。
 2011年は10本ほどの音楽ライブに行ったが、観客との距離の縮め方が最も上手なのは、断トツで宮沢さんだろう。ホコ天でパフォーマンスしてきたから、聴衆を前に自分をさらけ出す勇気というか、肝が据わっているのだろう。そして、何よりも歌いたいという気持ちが強いに違いない。一時、活動が低迷していた時期もあったが、今は完全に復活したどころか、過去最高の勢いさえ感じられる。ぜひ、また行きたいと思わせる2時間半の奇跡だった。帰り道、今のブームくらい全身全霊を傾けて、自分の仕事に打ち込みたいという気持ちになっていた。