2009年5月30日(土)17:30〜20:00
日比谷野外音楽堂
 天気予報は、曇り時々雨。野外なので雨はまずい、と思って、傘と大きめのカッパを用意して出かけた。ブームの20周年記念ライブ。立ち見席で整理番号432番は、ほとんど最後列の方だった。裏を返せば、チケットを取れただけでラッキーだったともいえる。大阪城野外音楽堂と日比谷野外音楽堂の2回だけのライブ。ブームとしてのライブは、3年半ぶりになるらしい。アルバムも「百景」を最後に5年、出ていない。宮沢さんはソロで寄り道ツアーをやったり、ガンガズンバで精力的に活動していたし、他のメンバーもそれぞれに活動していたのだろう。
 
 ほぼ定刻にはじまった。この20年間で生まれた名曲、代表曲を網羅したような選曲になるのかなと期待していたが、何曲目かで「上を向いて歩こう」をカバーしたり、続けて「津軽海峡・冬景色」を歌ったのには、ちょっと驚いた。いや、笑ったな〜。石川さゆり顔負けのコブシと目力で歌う宮沢さんはかなり可笑しかった!なんとなくこれで肩の力が抜けたというのか、聴く方も何の曲でもいいから、今のブームを楽しもうっていう気持ちになれた気がした。

 実に多彩な選曲だった。序盤でアッと思ったのは、「いつもと違う場所で」だった。大型スクリーンには手塚治虫のアニメーションが映し出され、人間と人間の融合やら自然界の成り立ちのような物語が手塚漫画ならではのタッチでユニークに描写されていた。「もしあと1年の命だと言われたら、がむしゃらに生きるだろう?そんな気持ちで生きてみるべきだと手塚は言う」という歌詞がドーンと胸の内に響いてきた。実にうまい!こういう歌を歌わせたら、宮沢さんの右に出るものはいないだろうと思う。もう何年も聞いてなかったが、改めていい歌だなと思った。「ブームの歌は、両手放しでハッピーというような歌が、ない!いつも悲しみや苦しみがあって、それをどうやって乗り越えて新しい朝を迎えるか、というような歌ばかり。そんなブームの歌の代表のような歌です。」というMCのあとに歌われたのが、「からたち野道」だった。イントロのピアノのフレーズが響いたとき、なんともいえぬ郷愁に涙が出た。この歌の詞は、多少、抽象的な部分があって、人によって思い浮かべる風景は違うように思う。この歌を聴くと僕は、少年時代を過ごした福岡の情景や漠然とした母という存在の温もりが思い出され、取り返すことのできない懐かしさに、いつも胸が締めつけられてしまう。

 1回目のアンコールのあとだったか記憶はあいまいだが、宮沢さんが三線を弾き、「島唄」を歌った。93年に発表され大ヒットしたこの歌で、僕もブームのファンに加わった。てっきり沖縄のバンドかと思ったら、山梨出身だと知って驚いた覚えがある。「島唄」もいいが、個人的にはアルバム「極東サンバ」が好きだ。この日は、「TOKYO LOVE」「ブランカ」「風になりたい」が演奏された。どれも本当にすばらしかった。ちょうど東京、バリ島、ブラジルがモチーフになっているこれらの歌は、国籍を問わず音楽の旅を続けるブームならではで、聴きながら世界中を旅行している気分になれるから、なかなかお得で楽しい!

 休止状態だったブームが、20周年を機に再始動する。このことについて、宮沢さんがインタビューに対して次のように答えている。「20周年を迎えるというのがどういうことなのかを考えた時に、20年間、同じメンバーでバンドを続けてきたのは自分たちの力だけじゃないと思ったんですよ。THE BOOMは4人だけのものじゃなくて、関わってくれたすべての人のものだな、ファンの人たちもTHE BOOMの一員だから、20周年を皆さんと祝いたいし、感謝したいなって。」

 2度のアンコールのあと、メンバー4人から一言ずつコメントがあった。最後の宮沢さんは声を詰まらせ、涙声で感謝の言葉を述べていた。あっという間に2時間半が過ぎていた。空に雨はなく、心の中に心地よい風が流れていたように感じられた。家に帰ってから何度も「いつもと違う場所で」を聴いている。「君が僕と結ばれているように 君は誰かと結ばれている 廻り廻ってその誰かと結ばれ僕は生かされている」という歌詞が、いいなと思っている。