ステージに現れたワンピース姿のbirdが「ビルボードライブは4年ぶり」と言っていた。2020年1月、ダイアモンド・プリンセス号で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した患者が出てから、日本中が長いトンネルの中にいるような日々だった。まさか3年も続くとは誰が予想しただろうか。映画も旅行も飲み会も、そしてライブも自粛してきたが、ようやく今年くらいから徐々に基の生活に戻りつつある。5月に第5類に移行してからもコロナ感染する人が身の回りで続出しているが、インフルにかかったのと同じような反応になってきている。久しぶりの待望のbirdライブは25周年記念である。一般発売初日にアクセスすると、開始30秒ですでに完売になっていた。そんなに人気だったとは、嬉しいけど悔しい…(涙)。それから1週間以上も経ってからビルボード東京から定期便(ハガキ)が届いた。birdライブの案内もあったので、「すでに完売してるのになぁ」と恨めしく思いつつ何気なくHPを見たら、まだ空席の○マークがゾロゾロあるではないか!「あのときの完売は、何だったのか?先行予約ではなく、一般発売のはずだったが?」と頭の中は疑問符だらけながら、無事にチケットを入手できて安堵したのだった。幸い仕事も休みを取れたので(平日公演はいつもハラハラする)、コロナ前のように昼に映画、夜にライブというパターンでプランを立てた。折しも是枝監督作品「怪物」の公開初日だったので、六本木ヒルズで観た(1つ前の会で舞台挨拶があったと後で知った!)。ある事実が人によって全く違ったものに見えるという黒澤監督の「羅生門」と同じシナリオ構造がうまく活かされていて、とても味わい深い作品だった。坂本裕二氏は今作でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞している。ミッドタウンではいつも立ち寄るスーパーの野菜コーナーで、約2倍の価格がついているエダマメや高級果物を扱っている店で1個1万円のマンゴーを見たりして、お金持ちの食生活を垣間見て楽しんだ(笑)。
 さて、ビルボード東京である。少し早めに着いて、セットのフードとお酒を飲みながら、開演までのワクワク感を楽しんだ。5階席は少し距離はあったが、元々小さい箱(300名)なので十分である。真正面の席なので、ステージ全体がよく見えた。総勢7名。バンマスのGENTAさんは何とサンダル履き!だいぶ白髪が増えた樋口直彦さんがギター、ベースは澤田浩史さん、キーボードが渡辺貴浩さん、コーラスがMegさんとHanah Springさんというお馴染みのメンバーだった。「時間があまりないので、お話は少なめで、たくさん曲をやります!」と言ってたが、相変わらずMCが滑らかである。初期の作品が多かっただろうか。デビュー曲「SOULS」や「空の瞳」、「オアシス」、「マインドトラベル」、「GAME」などやはりbirdを見出した大沢伸一の楽曲が多かったという印象。僕の場合は、5枚目の「vacation」から聴き始めたので、むしろ初期の作品の方を後で聴いたのだが、やはりbirdの原点は初期にあるという感じがする。デビュー時のアフロヘアが鳥の巣のようだったことで「bird」になった彼女は、僕の中では「南国の青い鳥」のようなイメージ。この日もそんな雰囲気を堪能することができて、心の隅々まで栄養分で満たされた。
 僕がbirdを知ったのは、すでにデビューから数年経っていた。田島貴男プロデュースの「チャンス」をカーラジオで聴いたのが2003年頃だろうか。2004年にリリースされた宮沢和史の「SPIRITEK」で宮沢さんとデュエットしている彼女の歌声を聴いて、さらに同じ2004年リリースの5thアルバム「vacation」を渋谷HMVで何度か見かけながら、買うかどうか迷って買わなかった記憶がある。そんな頃、たまたまe-plusのライブモニター募集というメールがきて、わずか20組じゃ当たらないだろうと思いながら応募したら当選して、初めて行ったライブが2005年3月3日、渋谷AXでの「enjoy vacation!」ツアーだった。知っている曲がほぼなかったわけだけど、とても楽しくて、一夜にしてファンになってしまったのだった。「ハイビスカス」のイントロのライブバージョンがすごくカッコよかった印象があるが、それがまさに「vacation」に収録されているシングル曲だったのである。元々好きだったミュージシャン、宮沢さんや田島さんと繋がりのあるbirdと出会って、かれこれ18年。ビルボード東京をはじめ、逗子の海の家、原宿の小さなレストラン、昭和のキャバレーを改装したライブハウスなど、いろんなところでbirdの歌声を聴いてきた。その時々の楽しかったこと、苦しかったこと、悔しさ、悲しさ、歓び、諸々の感情が当時聴いていた音楽とともに蘇ってくる。思えば今も、そこのところは変わってない。何かをやり遂げたと思ってもすぐまた次の壁が立ちはだかり、自分の力不足を思い知らされ、超えられる保証もないまま必死によじ登っていく。やってもやっても終わらない、さながら無間地獄のようである。だからこそ、音楽を聴く時間を大切にしている。本を読み、映画をみて、走ったり、泳いだりする時間を意識的に日常の隙間にとるようにしている。まさしく心のサプリメントである。「いつか時間ができたらやろう」は、ずっとやらないことになると思っている。やることを減らして、本当に大事なことだけを選んで、余裕をもって働いた方がいいという人もいる。そんな風に上手な生き方をしている人を時々、羨ましく思うこともあるが、結局、不器用にしかできなかった。無駄な努力も多い気がする。楽してなお、すばらしい成果が上げられるように創意工夫せよと松下幸之助さんも言っている。まだまだ足りないことを知る日々なのであーる(苦笑)。
 アンコールは、「とても好きな歌です。」といって、「9月の想い」をしっとり歌った。片想いの切なさ。思い通りにいかないからこそ、僕等は日々飽きずにいられるのかなとも思う。先日、うん10年ぶりに「銀河鉄道999」を観た。この作品で「永遠の命より、限りある命の方が大事」ということを教わったと思っている。限りあることがマイナスではなく、プラスにしていければと思うけど…。

♪bird
~25周年記念ライブ~
ビルボード東京
2023年6月2日(金)19:05-20:30/B5-8