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トロピカルフーズツアー

 渋谷公会堂
 2012/12/14 18:35-21:05

 彼女のCD棚でみつけたデビューアルバム「音楽旅団」を聴いたのがビギンとの出会いだった。フォークかブルースかよくわからなかったが、Bzや奥田民生を傾聴していた当時の自分の趣味にはあまり合わなかった。あれから幾年が過ぎ、僕自身の嗜好性も徐々に変わったが、それ以上にビギンの音楽性がずいぶんと変わった。10月に発表されたニューアルバム「トロピカルフーズ」には「音楽旅団」の片鱗もない。かろうじて同じなのは、比嘉栄昇の声くらいか(笑)。
 「トロピカルフーズ」を購入してから何度か聴いてはいたが、さらっと聞き流した程度だった。しかし、ライブでの印象はまるで違った。1曲目の「グッドナイト・アイリーン」も続く「国道508号線」もとても格好良くて、生の迫力、魅力はさすがだった。ビギンの3人(比嘉栄昇/島袋優/上地等)とサポートメンバーが2名(ba/dr)。相変わらず、MCが多い。基本的にすべての曲間にMCを入れる。そこまでサービスするミュージシャンはそうそういない。しかもそれが落語の高座のように可笑しい!たとえば、ホール名が渋谷公会堂に戻った話。ビギンのメンバーが会場に来るときに乗ったタクシーで「渋谷公会堂まで」と頼むと、運ちゃんが「ああ、レモンスタジオだね」と言ったとか。すでに「渋谷公会堂」なのに、それをCC・レモンホールと言うならまだしも、レモンスタジオと言われて…というエピソードを面白可笑しく話す。比嘉さんの語りだから面白いのだけど(笑)。赤ちゃんが泣けばすぐ絡むし、会場からの呼びかけにはすこぶる反応がよい。昔からライブでならしてきたバンドである。観客とのやりとりを含めてライブ好きなのがビシバシ伝わってくる。客の年齢層も驚くほど広い。それこそ、0歳〜60代まで満遍なくという感じである。
 今作に収録されている12曲はすべてやってくれた。ブラジルに行き日系ブラジル人と交流したことで生まれた「帰郷」、ハワイでのライブを機に生まれた「ウルマメロディ」、50年の歴史あるNHK「みんなの歌」で初めて歌詞に「おなら」が採用されたという「こどもしゅのうかいだん」。この歌は、子供の視点で今の政治を皮肉っているようでコミカルな名曲だと思う。背景に浮かび上がった星空の下で歌われた「星とハンモック」は、デビュー時のフォーク・ブルースを彷彿とさせるハワイアン風の美しい歌!沖縄銘菓サータアンダギーの美味しさを歌った「砂糖てんぷら」のなんと冗舌なことか!どの歌も本当によかった。
 ビギンが発明した「一五一会」というギターのお友達をブラジルで見つけたと言って紹介していたのが「鼻笛」とタンバリンのような「バンディロ」。鼻から息を吹いて口笛のような音を鳴らす「鼻笛」を使って歌った「我ったータイムは八重山タイム」も面白い歌だ。一五一会の紹介からはじまった「涙そうそう」、デビュー曲「恋しくて」、アンコール前の最後に歌われた「島人ぬ宝」などなど歌と漫談たっぷりの2時間半に、すっかりお腹いっぱいになってしまった。時は巡り巡って、僕のCD棚には「トロピカルフルーツ」に並んで「音楽旅団」がある。いつも予想とはちょっとずつ違う未来がくるが、今のビギンはなかなか好き、と思える。








 



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