久しぶりにビギンのライブへ行ったら、もう6年ぶりだった。光陰矢の如しというけど、年月の経過は益々スピードアップしているような気もする。「狭いニッポン、そんなに急いでどこへ行く?」である。
「東京のライブだというので、昨日は話し言葉も丁寧になっちゃってですね、前半、うまくいかなかったですよ。今日は、もうみんな同級生。言葉も汚くてもね、同級生なんだからと思ってやりますからね。」というようなことを比嘉栄昇さん(vo)が冒頭のMCでしゃべってて、変わってないなぁと笑ってしまった。ビギンは来年でデビュー20周年を迎える。「涙そうそう」の大ヒットもあって、すっかりメジャーになった感があるが、このMCのように、相変わらず石垣島出身の駆け出しミュージシャンという雰囲気を保っているのである。すごいなと、妙に感心してしまった。
演奏される曲は、今年発表された「3LDK」からが中心だった。ビギンの原点でもあるブルース調の曲があったり、島唄があったり、フォークがあったりで、この三位一体の音楽世界にたくさんのMCがあってビギンのライブは成立している。「僕たちはミュージシャンなので、音楽をたっぷり聴いてください」というのが多くのバンドの基本スタンスだと思うが、ビギンは全く違う。3曲続けて歌うのは稀で、大抵は1曲歌ったらちょっとしゃべり、2曲歌ったらたっぷりしゃべるという感じ。おそらく、しゃべるのは大変だろうと思う。音楽演奏に集中した方がずっと楽だと思うのだが、ビギンはそうしない。屈指のライブバンドともいわれるビギンだが、彼らにとってライブは音楽を聴いてもらうこと以上にお客さんとの対話の場なんだと思う。音楽は手段にしかすぎない、と見える。
いくつも面白い話をしてくれたが、中でも「かっちゃん」の話は笑えた。コザにある老舗ライブハウス「Jack Nasty’s」のオーナーが「かっちゃん」なのだが、米軍基地の縮小や不景気などもあっていよいよ店を閉じるという話になり、ケーブルテレビの取材なども入ってたそうだ。で、あるとき近所にある別のライブハウスの知り合いととうとう閉店らしいなという話をしていたら、笑って首を振るんだそうだ。10年前も同じこと言ってたし、あのかっちゃんだよって。そうはいっても今回はテレビでも言ってるしと気になって、しばらく経ってから店の前を通りかかって見てみたら、「新装開店」って看板が出てたというオチである(笑)。そういう人がいてもいいじゃないかって比嘉さんは言いながら、何度も「役割分担」ということを言っていた。かっちゃんのような人やいろんな人がいて、いろんな夢があっていいんじゃないか。最近は、学校やパネルディスカッションなんかに呼ばれたりするんだけど、そういうことができないから音楽やってるんだって言ってて可笑しかったけど、比嘉さんのメッセージはとても伝わってきた。同感である。そんなコザにまつわる面白いMCに続いて新曲「KOZA」を歌い、次は帽子にまつわる話をしてから「パナマ帽をかぶって」を歌ったりという調子で、1曲1曲がゆっくり歌われていった。
6年前の厚生年金会館のときもそうだったけど、ビギンにとってはライブハウスが丁度よい大きさのようだ。ホールだと観客と遠くて、やりにくそうに見える。彼らはもう袖が触れ合うほどの近さでやりたいようだし、たくさんのMCも観客との一体感を作るために必要だからやっているようにも見えた。「カリホー」という造語もきっとそのためだろう。沖縄では「お、いいぞ!」というようなときに「カリ」というそうだが、それと「やっほー」をチャンプルーして考えたのが「カリホー」だという。早速、ライブ会場は演奏が終わるたびに「カリホー」でいっぱいになった!(笑)
酒好きのオジーの話も笑えた。そのオジーは、つまみはソーメン1本でいいよと言って、ソーメンの端をちょこっと食べては飲むんだそうだ。比嘉さんはそんなオジーの話を聞くのがすごく好きで、そういう人になりたいと話していた。「なれるよ!」と会場から声がかかっていたが、これこそビギン音楽のベースにある価値観なんだなという気がした。今、世界はグローバリゼーションの波に包み込まれ、国際競争に勝ち残るために企業合併したり、効率化最優先で、無駄なコストとみなせば、人間もカットされてやむなしという風潮である。この終わりなき緊張感が新たなビジネスモデルを創出し、突出した一部の成功者を生み出してはいるが、一方では、心身を疲弊させる者、経済苦から自死する者を生み、子供の世界では弱者へのいじめを加速させているのである。全く不寛容な世の中になったものだと思う。しかし、ビギンのようなバンドがあり、それを支持する人たちもいる。閉塞した今の時代はつらいが、きっとこれから新しい時代が生まれるのであろう。比嘉さんが繰り返し使っていた「役割分担」という言葉は、きっと新たな時代へのキーワードになるに違いない。
アンコールは、「島人ぬ宝」、そして「涙そうそう」だった。最後は観客全体で合唱になり、たくさんの声がホールいっぱいに交じり合ってとても感動的だった。2時間半にも及ぶすばらしいライブの帰り道、「くわっちー」という沖縄料理店に寄った。ウチナーグチで「御馳走」を意味する「くわっちー」で、身も心も御馳走でいっぱいに満たされた。






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コンサート2009
2009年12月18日 東京厚生年金会館
沖縄料理店「くわっちー」
マグロとアボカドのサラダ、海ぶどう、ゴーヤチャンプルー、ソーキそば