「バカの壁」
 
 
著者:養老孟司
 
 
 2003年4月発行以来売れまくり、先日、私が買ったものは、2004年5月30日発行で59版になっている。最近の傾向は、極一部の本が記録的なベストセラーになり、その他大多数があまり売れないという状況らしい。どうもCDや映画も同じ傾向があるそうだ。一種の社会現象なのだろうか。
 タイトルは奇抜だが、内容は読みやすくて、なかなか面白い。大学の先生らしく、自分から情報を遮断して「バカの壁」を作ってしまう男子学生のエピソードから始まり、2001年9月11日のテロをTVで見ただけで「知っている」と錯覚してしまう怖さや、情報は日々変化し、人間の方は不変だと逆さまに捉えている怖さなどなど、豊富な事例を基に、現代社会の問題点がわかりやすく紐解かれている。
 今、何が必要なのかといえば、それは「人生の意味を考えること」だという。かつては「誰もが食うに困らない」がこの国の理想だった。その内容はともかく、そういう共通の目標を社会全体で共有していたということが大事なことで、それがなくなったことが今の問題だという。ちなみに養老氏は、「食うに困らない」に続く現代人の共通テーマは、「環境問題」になるだろうと示唆している。
 養老氏の考えは、中には「そうかな?」というものもある。が、それはそれでいい。これは教科書ではなく、人生の問題を解いていくための発想の転換を促すものだから。そして、養老氏も「まえがき」で書いているように、人生でぶつかる問題に、そもそも正解なんてないのだから。
 
 
(新潮新書)