「絶望のなかのほほえみ」
 
著者:後藤勝
 
 
 骨と皮だけの枯れ木のような躰で、わが子の将来を案じながら死を迎える女性。貧困のため親に身売りされ、橋の下で丸まって夜明けを迎える子供たち。プノンペンのディスコで朝まで踊り明かす若者…。
2001年までの内戦で数百万人の国民を失ったこの国では、今、エイズが「第2の内戦」と呼ばれている。伝統的な価値観が崩壊し、権力と金がものをいい、無責任なセックスがエイズを広めた。国民の半数以上が20歳以下という極端な人口ピラミッドのなか、約2.6%の国民がエイズ感染者・患者であるという。患者の家族、親族を含めると、かなりの人々がエイズの恐怖と苦しみに「絶望」を感じながら生活しているということになる。
 この写真集を見るのはとても辛い。いたたまれない気持ちになる。エイズになる理由はいろいろだが、戦時中の治療で注射針の使い回しにより感染したり、身売りされ朝から晩まで客をとらされて感染したりと、内戦や貧困が引き起こした社会的人災という面も強い。不治の病といわれたエイズも今は発症を抑える薬や延命のための薬もある。ただ、薬は高価で貧しい人には手に入れることができない。政府が無料で配給している延命薬は、必要な患者の約1割分しかなく、くじ引きの当選者だけに配られている。富をもつ者、くじ運のよかった者だけが命を維持できるのだ。
 エイズ患者の悲惨な姿は、患者たちの同意がなければ写せないはずである。いずれ死にゆく醜い姿をどうしてカメラの前にさらけ出すことができたのだろうか?「患者たちは、誰にも知られず死んでゆくよりも、<私たちの存在>を人々に知らせたいと本気で願っていた」と著者のあとがきにあった。虚しく悲しい話である。それが、「絶望のなかのほほえみ」なのかもしれない。
 カンボジアでは、今も1ヶ月に400〜800人の子供たちが人身売買組織の手によって国外に売られているという。
 
 
(めこん)