日 光 ふ た た び
日光はちょうど紅葉の季節。そして、今年は、東照宮400年式年大祭の節目に当たり、大渋滞が予想された。朝一で東照宮へ行くか、東照宮はスルーして、一気にいろは坂を抜けてしまうか、どっちにしようか?思案の末、いろは坂を抜け、東照宮は帰りに寄ることにした。
中禅寺湖、男体山の眺望は、見事であった。緑、赤、黄とまるで信号機のようなモザイク状の色彩が目の中に飛び込んでくる。展望台に限らず、あらゆる場所に絶景スポットがあり、そのたびにバイクを停めて紅葉狩りを満喫した。途中、竜頭の瀧近くで車4台の追突事故に遭遇した。きっと、脇見運転だろう。思わず目を奪われてしまう道がどこまでも続く。
ライダーも多かった。意外にもピースサインを送ってくる人が少なくなく、僕も久しぶりにやっていた。ピースサインはどこでもやるわけではない。都心でやる人はまずいないし、伊豆や箱根でもあまり見ない。その境界線がどこにあるのかよくわからないが、その土地が醸し出す雰囲気によるようである。ピースサインのメッカは間違いなく北海道だろう。立ったまま両手離ししたり、いろいろ見たりやったりしたものである。
初日光は小学校の修学旅行、という人は、首都圏では珍しくない。以来、何度行ったか数えたことはないが、数え切れないほど行ってもいい「秋の聖地」である。ただ、都心を抜けるのがちょっと苦痛である。特にバイクの場合、雨が降れば路面は滑りやすく、カーブと交通量と進路変更の多い首都高を抜けていくのは、少々気が重い。
例によって、日程調整では、コロコロ変わる週間予報とのにらめっこが続いた。英国開催のワールドカップで大健闘した日本ラグビーにあやかり、「列島はラグビーボール型に広がった3つの高気圧に覆われ、しばらく晴天が続くでしょう」なんて自信満々の予報だったのでバイクと宿の予約を入れたのだが、「高気圧と高気圧の谷間にある首都圏では雨になるでしょう」と翌日にはあっさり変わっていてガックリである。結局、当初予定日は雨となり、1週間後に予約変更したのだが、その予定日も直前に雨予報に変わってしまい、「こうなりゃ、レインウェア着て走ろう」と腹をくくるしかなかった。
10月17日(土)。予報はいい方にハズレ、朝方まで降っていた雨は、昼にはあがった。バイク屋までは電車と徒歩で行く。昨年は別の店で借りたので、2年ぶりである。「2年ぶりですね!」というと、店員さんが驚いていた。確かに、つい数ヶ月前にも会ったかのような感じがした。1日1日が退屈なほどゆっくり過ぎていった子供時代の時間感覚は、二十歳を過ぎる頃にはすっかり短く感じるようになっていた。それこそが大人になった証、とでもいうように…。
湯ノ湖湖畔のレストハウスで珈琲タイムをとり、帰路につく。いろは坂をのんびり下り、田母沢御用邸記念公園に立ち寄った。大正天皇から3代にわたり使われていて、豪華な邸宅や庭園の優雅さにくつろいだ。結局、東照宮は時間切れで寄れず、代わりに東照宮の眠猫を彫った左甚五郎にあやかった日光甚五郎煎餅で有名な石田屋本店で煎餅を買った。とても小さな民家のような店に、品のよいおばちゃんが一人で売り子をやっていた。いよいよ帰るというとき、駐車場をなかなか出られず難儀した。先に支払いだけして、出庫する際はバーの脇から出るという話だったのだが、その場合の機械操作を係のおばちゃんが知らず、別のおじさんを呼んで教えてもらっていた。金属製の輪っかでセンサーに反応させないと、駐車カードを読み込まない仕組みになっていて、なかなか興味深かった。
今市市は今は日光市に合併しているらしいが、ギネスにも登録されている杉並木街道の一角にある報徳庵で蕎麦を食べた。わかりづらい場所にもかかわらず、中高年の客で行列ができていた。今市は栃木県随一の蕎麦産地だそうで、蕎麦のとてもいい香りがした。腹ごしらえをし、あとはひたすらひたすら走った。「家に着くまでが遠足です」という小学校の頃の先生の言葉を思い出しながら、事故をしないよう注意しながら、走り続けた。

今回のレンタルバイクは、KTM DUKE390。KTMは、オーストリアのオフロードバイクメーカーで、モトクロスやパリ・ダカで向かうところ敵なしの戦績を残している。「KTMって何?」と昔から疑問だったが、元々の会社名「クラフトファールツォイク・トゥルンケンポルツ・マッティクホーフェン」の頭文字だと今回、知った。ちなみに、クラフトは造る、ファールツォイクは乗り物、トゥルンケンポルツが創設者の名前、マティクホーフェンが地名のことで、やっぱり略さないと長すぎて覚えられない!
DUKE390は、オフロードの車体にオンロード・タイヤを履かせた「モタード」というタイプ。長年オフロード車に乗っていたが、モタードは初めてだった。小型車並みの小さな車体に370ccのエンジンを載せているため、想像以上にトルク感があった。車体が小さくて頼りなさそうにも思われたが、いざ走ってみると、強烈な推進力に圧倒された。高速巡航中、6速からでも強力な加速力があり、しかも、車体に安定感があるので、恐怖心が湧いてこない。エンジン音も心地よく、頼もしいバイクである。
2015.10.17-18 走行距離 551km
燃費 34.9km/L 車種 KTM・DUKE390
土曜日午後の首都高は、そこそこ混んでいた。東北道へ向かう途中、大橋JCTから山手トンネルへと入る。全長18kmのトンネルは日本最長、世界2位らしいが、とにかく暑い!優に30℃は超えていただろう。夏場の渋滞時はさらに酷いらしく、ミスト冷却が行われているらしい。長いトンネルを抜けると外はヒンヤリ涼しい、というか、徐々に寒くなってきた。埼玉県の蓮田SAで熱いコーヒーを飲む。しばらく行くと収穫間近の稲が夕日に映え、黄金色に輝いていた。利根川に架かる利根川橋がこの日のハイライト!これぞマジックアワーといえる美しい風景だった。
利根川の先、少しだけ群馬を走り、その先が栃木だった。この日は、西那須野の宿に行くだけなので、寄り道もせずひたすら走った。約3時間半で、到着。身体が冷え始めていた。「夕食は餃子の食い倒れだぁ」と意を決し、「健太餃子の宇都宮餃子館」で12種類の餃子セットを食べた。味はよいが食い倒れには至らず、中華麺を追加して、どうにか満腹になった。ホテルに着くと、外国人の受付嬢が堪能な日本語でお迎えしてくれた。